仮想通貨「ビットコイン」について、楽天代表取締役会長 兼 社長の三木谷浩史氏は「(楽天サービスへの導入を)考えている」と語り、PayPalの共同創業者であるピーター・ティール氏は「すばらしいブレイクスルー」だったと評価した。2月23日に開催された「楽天金融カンファレンス2015」での発言だ。
2014年2月に起きたマウントゴックスの経営破綻によって、その存在が知れ渡ったビットコイン。日本のマスメディアの多くはこの仮想通貨を“危険なもの”として報道したため、ネガティブなイメージを持つ人が多いだろう。しかし、「ブロックチェーン」という仕組みを採用することで発行主体を持たない、つまり1つの中央銀行などに依存しない点や、国内外の送金手数料が非常に低いことなどに、多くの金融機関や事業者が注目している。
直近では1月に米国のベンチャー「Coinbase(コインベース)」が、米国で初めて当局公認の専用取引所を開設。日本でも1月にリクルートやGMOインターネットがビットコイン取引所「bitFlyer」に出資し、同事業に参入した。なお、楽天は2014年秋にビットコイン決済サービス「Bitnet」に出資している。
三木谷氏とティール氏、いずれも金融サービスを手がけた経験を持つ2人は、ビットコインをどう評価しているのか。まずティール氏は、ビットコインについて「非常にすばらしいブレイクスルーだったと思う。プロトコルや暗号化技術、システム構築はすばらしい」と評価した。
続けて「PayPalは新しいシステムを作ったが、新しい通貨は作れなかった。逆にビットコインは新しい通貨を作ったわけだが、新しい決済システムは作れなかった」とコメント。その上で、ビットコインに今後求められるのは、いかにシームレスに日常的な決済(トランザクション)を可能にするかだと語った。
また、DELLやエクスペディアなどの企業がビットコイン決済を導入し、米規制当局もこれを認める流れが生まれつつあるが、ティール氏は過去1年間のビットコインの決済額が増加していない点を指摘。「少し足踏み感がある。多くの人が受け入れているように見えるが、まだ消費者が使うほどではない」と分析した。
続いて、三木谷氏は「今後もさまざまなプライベートなグローバル通貨は登場するだろう」と語り、その中で最もチャンスがあるのがビットコインとの見方を示す。「たとえば中国のサイトから製品を買うときに通貨の為替を計算しないといけない。そして、スプレットが高くない形で支払わないといけない。そこにはプライベートなグローバル通貨に大きなチャンスがある」(三木谷氏)。
ただし、日本ではまだビットコインを使えるサイトや店舗が少なく、普及しているとは言えない。こうした状況を変えるには楽天を始めとする大手事業者が決済手段として取り入れる必要があるのではないかという疑問が寄せられた。
これに対し三木谷氏は「(楽天サービスへの導入は)考えてはいるし、おそらく使うと思うが、時期は企業秘密だ」と語り、ビットコインの導入に前向きな姿勢を見せた。「我々はあらゆる決済プラットフォームを受け入れたい。それは、PayPalもビットコインもだ」(三木谷氏)。
また、導入にあたり規制当局などの障壁があるのかという問いには、「障壁があるかどうかも分からない。そこは政府も曖昧にしている。(ビットコインを)理解していないのか、あるいはあまり厳しい規制をしたくないのか。いずれにしても私が把握している限りでは、楽天にビットコインを導入する明示的な規制はないと思う」と語った。
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