こうした活動に加え、4月から新たに始動するのが産官学連携プロジェクト「真鶴スマート魚つき林」だ。真鶴町の自然と、KDDIのIT技術、そして多摩美術大学のアイデアを融合させることで、真鶴町の新たな魅力の創造を目指すプロジェクトとなる。(1)情報発信、(2)観光客の誘致――の大きく2つの取り組みを進めるという。
まず、情報発信についてはKDDI研究所の「自由視点映像」技術を応用して、360度のアングルから魚つき林をバーチャル体験できるコンテンツを制作。映像はドローンを使って撮影する予定で、立入禁止のエリアなども見られるようにする。また、真鶴町の倒木した木材や貝殻を使ったデジタルグッズなども企画するという。観光客の誘致では、「auスマートパス」で現地の博物館などのクーポンを配信したり、ARコンテンツを利用したイベントを開催する予定だ。
KDDI コーポレート統括本部 総務・人事本部長の村本伸一氏は、「CSR活動にはダイバーシティが必要だと思う。企業だけでなくいろいろな視点で同じ取り組みに関わっていくことが発信力になる。キャリア教育という意味でも重要だと思っている。学生が大学の知識や経験だけじゃなく社会と関わっていく。そして企業もサポートする。こういう取り組みはもっと日本で広がっていくべき」と、産官学プロジェクトの意義を語った。
これらの企画は多摩美術大学の生徒が考える。同校では、美術大学の創造性を社会に生かすための実践型授業であるPBL(Project-Based Learning)を設けている。過去には東京大学と共に衛星を打ち上げて芸術作品を制作したり、廃棄されるバナナの茎から抽出した繊維を使って、織布や紙などを生産するシステムを構築している。こうしたアイデアを同プロジェクトで生み出したい考えだ。
4月から始まる「真鶴ソーシャルデザイン」授業で、実際に20人ほどの生徒とともに真鶴町を視察し、5~6月にかけてワークショップでアイデアを創出。8月に真鶴町でプレゼンテーションをする。授業や映像の撮影にはKDDIの社員や研究所のスタッフも立会い、アドバイスをするという。優れたアイデアがあればKDDIが具現化に向けて検討し、真鶴町内のスペースやウェブサイト、KDDIのショップなどで展開する予定だ。
宇賀氏は、「枯れていくクロマツをどうやって保全していくのか。町だけでは考えられないアイデアを企業や学生の力を借りて出すことで、自然や海岸線を守っていく。これがいま取り組まなければいけないことだ」と語り、プロジェクトを通じた森林保全や真鶴町の活性化に期待を寄せた。
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