BetterWorksを例に考えてみよう。これは、仕事の目標を設定して進捗状況を追跡し、その情報を他のユーザーと共有できるアプリだ。同社はApple Watchアプリの開発がきっかけで、デザイン面の一部の変更をiPhoneアプリに組み込もうとしている。BetterWorksのCEOのKris Duggan氏によると、iPhoneアプリの今後のアップデートで、以前は考えていなかった新しい方法でデータを提示する手段やアニメーションが追加されるという。冗長な目標リストを表示するのではなく、よりミニマリスト的なアプローチを採用する。
「デザイン面の細かな部分ではあるが、これを機に情報をもっと簡潔で利用しやすく、より簡単に消費できるものにする方法を考えるようになった。Apple Watchというフォームファクタがなければ、このような厳しい決断を迫られることはなかっただろう」(Duggan氏)
BetterWorksは、Apple Watchから学んだデザイン面の知見に基づいて、同プログラムのウェブブラウザバージョンをデザインし直す可能性もある、とDuggan氏は述べた。
先日のAppleイベントでアプリを紹介された企業の1社であるAmerican Airlinesは、フライトの最新情報や搭乗券を表示するアプリを開発した。「Travel Cue」という機能では、フライトまでのカウントダウンと関連情報が表示される。American Airlinesのモバイル&オンライン戦略担当ディレクターを務めるKevin MacFarland氏は、iPhoneアプリのメイン画面の1つを変更して、こちらにもTravel Cueを表示する予定だと述べた。
「その顧客体験を快適なものにする方法を見つけることが非常に重要だ。しかるべきときにしかるべき情報を提供する、ということに他ならない」(MacFarland氏)
人気のメモ作成アプリEvernoteでも、Apple Watchアプリ向けに開発された新機能がiPhoneに移植される予定だ。パーソナライズされた新しいメモリストは、ある状況でユーザーが必要としそうなメモのトップ5を、位置情報、予定表、各ユーザーの利用パターンから予測して表示しようとする。例えば、トップ5のメモの1つは、ユーザーがこれから出席する会議の参加者の名刺情報かもしれない。
「ふと立ち止まって、『ちょっと待て、あの人の肩書き何だったかな』と思ったときも大丈夫だ。われわれにとって重要なのは、ユーザー自身のコンテンツを受け取って、それを意味のある形で返すことができるだろうか、ということだった」。Evernoteのモバイルプロダクツ担当バイスプレジデントのJamie Hull氏はこのように述べた。
パーソナライズメモリストはApple Watchアプリに搭載され、iPhoneと「iPad」の通知センターをプルダウンして表示するEvernoteの「Today widget」にも統合される予定だ。同ウィジェットはこれまで、ユーザーの最近のアイテムを表示するだけだったが、今後はこれに加えて、ユーザーが見たいと思うようなメモを予測して表示するようになる。ユーザーがこの機能を気に入れば、Evernoteは同様の機能を他の領域にも追加するかもしれない。
Hull氏によると、Evernoteのチームでは、ウェアラブル向けの開発を契機に、将来的にすべてのメモのレイアウト方法を再考すべきか、ということも議論されるようになったという。予測の精度が向上すれば、予想したユーザーのニーズに基づきメモリストを並び替え、Evernoteアプリに特別なセクションを設けて、検索を実行するのではなく、そのセクションからメモを選べるようになるかもしれない。
「ユーザーが必要とするものを、必要になる前に予想を試みる。Evernoteアプリは今後、当社の全プラットフォームにおいて、主にその方向に進んでいくものと考えている」とHull氏は言う。「この機能は、ユーザーニーズの予想を試している最初の場所の1つだが、長期的には、当社の全アプリでの取り組みに影響を及ぼすと私は確信している」(Hull氏)
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