Appleの新しい「MacBook」は、コンピュータ業界からケーブルを排除しようとしている。準備ができていようといまいと関係ない。
この薄型ノートブックのUSBポートは、新しい小型の規格「USB Type-C」ポート1基だけだ。Type-Cは2015年になって各社のデバイスに少しずつ搭載され始めた多目的のポートで、ハードドライブなどの外部機器を接続するほか、動画をテレビや外部モニタに映し出し、充電時に本体に電力を供給することができる。
新しいUSBポートの柔軟性は非常に高いが、それでも1基しかないことに変わりはない。プリンタ、イーサネットケーブル、外付けハードドライブ、カメラ、モニタ、キーボード、マウス、テレビ、ゲームコントローラ、タブレットなどを接続する必要があるユーザーは、不自由に感じるかもしれない。
ユーザーはこれに慣れた方がいいだろう。新MacBookは、業界が無線技術への依存をますます強めていくという方向性を示唆しているからだ。不便さを伴う技術の移行は、Appleユーザーについて回る特権と苦しみを浮き彫りにしている。また、Appleが占める独特な立場を裏付けるものでもある。つまり、同社は思い切った変更によってコンピュータ業界を変革することができ、それをやっても許されるということだ。
「Appleはまたしても時代を先取りした」。Endpoint TechnologiesのアナリストRoger Kay氏は、今回のMacBookでポート数が切り詰められ、無線機能が強化されたことについて、こう語っている。
スマートフォンとタブレットの世界有数のメーカーであるAppleは、ユーザーの目を未来に向けようとしている。同社のワールドワイドマーケティング担当シニアバイスプレジデントであるPhil Schiller氏は、新型MacBookを披露した米国時間3月9日のイベントで、1ポートの設計について次のように語った。「ノートブックの未来において唯一インテリジェントなビジョンは、ケーブルが不要な製品だ。ケーブルを繋がなくてもさまざまなものに接続できる環境である」
Appleはこれまでにも、将来性がないと判断した古いテクノロジを切り捨ててきた。1998年に登場したオールインワン「iMac」では、旧来の「Apple Desktop Bus」(ADB)コネクタを廃止し、キーボードとマウスの接続にUSBを採用したほか、さらに物議をかもした変更として、フロッピーディスクを非搭載としている。今やADBコネクタは歴史の1ページとなり、フロッピーも使われてない。2008年に発表された初代「MacBook Air」ではCDドライブとイーサネットポートが排除され、その選択はハイエンド機である「MacBook Pro」にも引き継がれた。こうした動きは、アプリのダウンロードやWi-Fi経由でのNetflix視聴が一般化している現状に即したものだ。
Appleが方針を覆し、MacBookの今後のバージョンでポートを増やす可能性もないわけではない(実際に、初代MacBook Airを刷新した際にポートを増やしている)。だが当面の間は、1ポートという現実を受け入れるか、他の新しいノートブックを選ぶしかないだろう。
古くからのユーザーにとって変化は困難なものかもしれない。また、新型MacBookの設計は万人向けではない。1299ドルからという価格設定は別にしても、である。
Appleが数年にわたって売り込んでいた高速ポート「Thunderbolt」対応のデバイスなど、多くのデバイスを接続する必要があるプロフェッショナルは、他の選択肢を探すかもしれない。パワーユーザーのうち、充電のときや、外付けドライブにデータをバックアップするときには信頼性の高いイーサネットアダプタを使いたいという人は、運が悪かったということになる。外回りの仕事が多いユーザーは、USBメモリからプレゼンテーション資料を読み込んでプロジェクタに表示する場合、Appleの79ドルの「USB-C Digital AV Multiport Adapter」のような「ドングル」が必要になるだろう。
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