Ingressを運営しているNiantic Labsの川島優志氏に、前編ではIngressの軌跡や現在起きているさまざまなムーブメントについて聞いたが、後編ではIngressは今後どのように進化していくのか、また新機能搭載の予定や3月28日に京都で開催されるイベントへの期待などについて聞いた。
――もう1つの大きなムーブメントとしては、企業がIngressに参加してきています。アクサ生命、ローソン。これはどういう方針なんですか。
川島:どこかの時点でIngressというかNiantic Labsは収益を上げなければいけないでしょう。将来的にはIngressのプラットフォーム……いまIngressにあるポータルの情報というのは、世界の中でも非常に重要なデータベースになっていると思うんです。
今までにあったデータベースは、たとえば地域の特に有名な観光名所や、料理のおいしいお店を集めたものしかありませんでした。Ingressの場合は、ポータルの名前として「よく見るとキモいぱんだ」など、人びとが作った芸術作品だったり、看板だったり……普通はデータベースに登録されないようなものがたくさん、世界規模でデータベースになっています。
これは人類の歴史の中でもなかったような貴重なデータベースだと思います。これをカタログ化するだけで、人間の想像してきたものがわかるような…。その土台部分のデータにアクセスし、それを使った別のアプリケーションやサービスを作れるようにしていきたい、というのが今の方針です。
Ingressが1つの成功例というか、実際に人を動かせるもののモデルケースとして、Ingressはこれからずっと続いていきます。ただ、土台部分へのアクセスを可能にすることで、世界中のクリエーターがまったく違うものを作れるようにしたいのです。たとえば、より子ども向けのものだったり、萌え系の要素を入れたゲームだったり、まったくいまのIngressとは違うものが作れるようになるとおもしろいと思いませんか。
その土台、つまりプラットフォーム上では、いろいろな収益モデルがとれるようにしたいと思っています。ただ、誤解がないように言いますが、Ingress自体は今後も課金をしないままです。でも、今後どういう風にしたらいいかということで、今までになかった仕組みをいろいろと考えています。たとえば、簡単に言えばGoogleは検索連動型広告を用いて、ユーザーによる「検索」の行動自体を妨げない形で、でもクリックしてウェブサイトにアクセスすることで、スポンサーがお金を払う形を構築しています。
Ingressは、実際に場所(ポータル)をスポンサーすることによって、そのポータルを訪れた数によって収益が発生するようなモデルを目指しています。夢のような話ですが。で、ローソンは1つのモデルケースです。ユーザーに課金するのではなくて、ローソンのポータルをハックしたり、レゾネーターを挿したりしたアクションに対して、スポンサーからの収益が発生するといったモデルを目指して試行しています。ローソンの例で言えば、予想をはるかに上回る成果がでていると聞いています。つまり、設定した金額がスポンサー料として支払われており、ローソンも非常に満足しています。
――アクサ生命については。
川島:アクサ生命も同じです。アクサ生命の店舗自体がポータルになっていて、そのほかアイテム「AXAシールド」という形でゲーム内に露出があるという形です。彼らもIngressをスポンサードしてくれています。
――スポンサーは、今後も増えていきますか。
川島:ゲームを妨げない形の収益モデルを作ることを重視していて、もちろん商業的なポータルが増え過ぎればゲームを妨げますし、プレイヤーがゲームに集中しているときに広告を出しても妨げます。どういう形だったらエージェントが納得する形でできるかをいつも意識しています。
我々としては、収益を上げるモデルを模索していきたいというのと、まったく斬新なモデル、「訪問連動型」の収益モデルが成功するほうに努力していきたいと思っているので、これからも増やすのは間違いないと思います。これも、誤解をしないように言いますが、もちろんどういう形であればエージェントに納得してもらうかをかならず考えたうえでですが。
――現在、Ingressをスポンサーしたいと考えている企業は多いんでしょうか。
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