Google マップとスマートフォンの位置情報、さらに拡張現実(AR機能)を使った新感覚のスマートフォンゲーム「Ingress」が熱い。Googleの社内ベンチャーであるNiantic Labsが開発していながらも、ほとんど宣伝活動はしておらず、口コミだけであっという間に全世界にムーブメントを起こしている。
Ingressは簡単に言うなら、レジスタンス(青チーム)とエンライテンド(緑チーム)に分かれて、ポータル(拠点)を奪い合う陣取りゲームだ。通常のゲームと違うのは、現実世界にあるランドマークや名所がポータルになっており、実際にその場所の近くまで行かないとポータルを奪えないという点だ。
ある意味、聖地巡礼的であり、オリエンテーリング的であり、スタンプラリー的でもある。つまり、ゲームでありながら、外に出かけていかないと、まったく何も始まらないというわけだ。ゲームを進める目的は?楽しみは?──と聞かれると意外と困ってしまうのがこのIngress。陣を取り合うのが目的ではあるが、局地的に陣取りによる支配地域ができてしまうものの、勝敗を決するようなことにはならない。ある意味、陣取りはお互いの縄張り的なものであり、実際に大局を変えられるようなものでないことはプレイしていくうちにすぐわかる。
では、なんのためにやり続けるのか。陣取りはあくまでもIngressの1つの要素であり、数多くの目的をユーザー自身が設定できる点がそれぞれの目的となるのだ。それだけに最初は戸惑ってしまう人も多いのだが、一度目的を見出してしまうと、そのままハマってしまうことが多い。
実際にポータル探しで街を練り歩くので、歩く距離が格段に伸び、結果的にダイエットになったり、よく眠れるようになるなど健康的になった人もいる。長年住んでいながら、街をしっかりと見て回ったことがなく、ポータルによって知らない名所や名物に出会い街の魅力を再発見した人もいる。
スマートフォンのゲームと言えば、基本無料で課金アイテムなどを後から購入するイメージが強いが、Ingressにはそういったシステムもない。最初から最後まで無料で楽しめるのだ。その代わり、行ったところのない場所のポータルを探しに車や電車で使ったり、スマートフォンの電池切れ対策としてモバイルバッテリや中距離移動用の自転車などを購入したりする。これらは“リアル課金”と呼ばれることがある。課金と言っても普通の買い物であり、旅行の交通費として払うだけなので、まったく健全のもの。
Ingressの自由度はプレーヤーだけでなく、自治体や企業にまで波及している。詳しくは次回以降で解説していくが、これからも自治体や企業を巻き込んで、Ingressを盛り上げていきそうな気配だ。特に自治体は力を入れているところも多い。実際にプレーヤーがその地に足を運んでくれるので、“町おこし”として注目されているのだ。
岩手県はIngressを観光振興に活用している自治体の1つで、2014年11月に日本で初となる自治体公式のイベントを開催。多くのエージェント(Ingressプレーヤー)が岩手に訪れている。
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