What's Ingress ?

Ingressの新機能と今後のプラットフォーム展開--川島優志氏インタビュー(後編) - (page 2)

別井貴志 (編集部) 井指啓吾 (編集部)2015年02月28日 07時00分

川島:いま引き合いが大変多いです。日本でIngressのプレイヤーが非常に増えていて、もうまもなく米国に追いつくところまで来ています。なので注目されてきており、以前とは比べものにならない量の引き合いがあって、その中でどことやるかという話になってきています。

 今までのスマートフォンのゲームは、ユーザーに課金をする形でやってきたために、客観的にはギャンブル要素が強いイメージがあります。Ingressはそういった見られ方を覆すような……、本来ゲームというのは、人類にとってすごく大事なものだと思うんです。身分などに関係なく人をつなげてくれるし、コミュニケーションを促進してくれます。頭も使って。本当はすごく楽しいもの。

 Ingressを、スマートフォンという新しいデバイスでのゲームの成功例の1つにしたいですね。

――なかなか開示されないようですが、全世界でユーザーは何人くらいいるんでしょう。

川島:基本的には国別の数も公表していなくて、ダウンロード数は1000万件を超えましたが…。そうですね、たとえば一般的なゲームはダウンロード数に比べてアクティブユーザー数は非常に低いです。0.0X~0.00X%という数値ぐらいが本質だと思います。一方でIngressは、アクティブユーザー数が非常に高くて、そういったゲームとはケタが違う数値になっています。


――全世界でアクティブに利用されているとなると、それをどういうシステムで動かしているのかが気になります。

川島:テクノロジで人を幸せにしたい、という思いが成り立ちの1つにあって、人が幸せを感じるのはどういう時かと考えると、1つは動くことです。運動することで、人は幸せを感じる。なぜなら運動すると幸福感を得られる化学物質が脳内で分泌されるから。で、これは家の中でゲームをしていても分泌されます。画面からの刺激によって。

 でも、我々が考えているのは、人が外に出て、歩いて、自ら運動することで分泌されるもののほうが自然だし、気持ちがいいということ。ゲームを続けてもらえる要因の1つだとも思います。

 もう1つは、外に出て人がつながること、コミュニケーションが生まれること。他人とコミュニケーションをとることで人は幸せを感じるというのがあって、その2つがいい感じで循環していて、そこにたとえば自分の周りの世界が再構築されていくようなワクワク感だったり、自分の世界が広がっていく楽しさだったりが組み合わさって、新しい幸せが生まれてくるのかなと思います。

 今まで、いろいろなテクノロジは、人を閉じこもらせる方向、動かなくても何でもできる方向にあったように思います。買い物も検索も、ジョン・ハンケ自身が作ったストリートビューやGoogle Earthも、ここにいながらにして世界が見えたり。

 テクノロジ全般が人を閉じこもらせる方向に進化してきたと思うんですけども、Ingressはその対極にあって、人を外に出すと。人が外に出て楽しむ領域を拡張していくという方向です。

 全世界のIngressによる通信トラフィックをどのようにしているかは、Googleのテクノロジを活かしています。エンジニアもGoogleのインフラストラクチャを有効活用しています。しかし、トラフィックを安定化させるなど、Ingressのプレイに支障を出さないようにするのは、非常に困難な作業です。

 特に東京の含まれている地域は、密度的にもプレイヤー数的にも、世界で最も負荷が大きい地域です。これも詳細は言えませんが、運営開始当初に設定した「これを超えたら注意」というラインを、世界で最初に超えたのがこの地域なのです。それは3~4カ月くらい前のことです。エンジニアも「このアラートが鳴る日がくるとは」と驚いていました(笑)。

 その時はすごく動作が重かったと思うんですよね。少しずつリソースを増やして、新しいターゲットを設定して、と日々対応しています。プレイヤーの増え方が急激なので難しいところもありますが、エンジニア達も善処しています。IngressはGoogleのインフラストラクチャを使って、サーバの数は公表していないですが、数千台とかそういうレベル感ですかね。非常に大きなリソースを使っています。

――プレイヤー1人1人のサーバとのやりとりのデータ量はそんなに多くない気もしますが。

川島:いえいえ。それでも、地図を使っているアプリなので、その部分のデータ量は多いですね。最も負荷が大きい処理は「リンク」です。リンクができるかどうか、線が交差していないかのチェックが非常にサーバに負荷をかけるので、これを東京のような高密度な地域で実行するのは本当に大変です。特に長距離リンクだと計算が大変。データ量だけではなく、サーバ負荷に関しても東京は非常にユニークな地域になっています。


3月28日には公式イベント「Shonin(証人)」が京都で開催される

――3月28日には世界で同時並行して行われるイベントが京都でありますので、ユーザー向けてメッセージをいただけますか。日本語化も噂されますが。

川島:日本語化は進めていて、京都のイベントまでに実装したいと思っています。京都のイベントは、東京(ダルサナ)の後ということで期待が高まります。実際に、参加登録者数の伸びが東京よりも早いです。

 京都は東京以上に歴史の深い街なので、魅力的なポータルがたくさんあります。今回は外国からもエージェントが多数参加すると思うので、ぜひ京都に来るエージェントは、世界各地のエージェントとのコミュニケーションを楽しんでほしいですね。また時には顔を上げて、京都のすばらしい街並みや風景を楽しんでください。京都で、東京のあのドラマを上回るような、どんなことが起こるのか本当に期待しています。

――最後に、個人的ですがユーザー視点から要望があります。ぜひともほしいのが、好みや想い出のあるポータルを登録、記録しておける「お気に入り」機能です。もう1つは自分がオーナーになっているポータルがどこなのかを知る機能もほしいです。エージェントによっては意見が分かれるかもしれませんが。

川島:以前からリクエストされている機能がいくつかあります。その1つがおっしゃるような「Favorite」機能です。これは実装する方向で進めています。もう1つが自分の訪れたポータルをわかるようにしたいという機能です。思いで深いポータルキーがたくさんあるエージェントは多いでしょう。たとえばメディア芸術祭の展示を作ってくれた真鍋さんは世界各地を巡っているため、ポータルキーが1200個もあると言います(笑)。

 そういう人のためにも、自分が訪れたポータルがカタログとして見られるような仕組みを作りたいと思っています。

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