震災から4年--変化する被災地に向けたKDDIの復興支援策

 東日本大震災から4年が経過しようとしている。特に被害の大きかった岩手、宮城、福島の3県を中心とした被災地では、現在も震災からの復興に向けた取り組みが続いている。一方で、それ以外の地域では、歳月が経つにつれ震災や復興に関する情報が減少し、人々の関心も失われつつあるなど、震災の“風化”が叫ばれて久しい。

 そうした中にありながら、復興に向け継続的な取り組みを実施している企業の1つにKDDIがある。同社では被災地の変化するニーズに対応するべく、これまでもがれきの撤去やコミュニティの再生など、さまざまな対応を進めてきたと、KDDIのコーポレート統括本部 CSR・環境推進室長の鈴木裕子氏は話す。鈴木氏が現職に就任した2014年に改めて被災地の視察を実施し、その中で今後、KDDIとしてどのような復興援策を実施していくべきか考え、現在は被災地の自立支援に向け、3つの取り組みに注力しているとのことだ。

被災地の自立に向けた支援活動に注力

 1つは産業支援、中でも岩手県大槌湾のほたて養殖組合に向けた支援に注力しているとのこと。大槌町は震災により漁協が破たんしたことでほたての販路が失われ、漁をしても商品を売る先がない状況にあった。そうしたことからKDDIでは、ウェブサイトを用いた販路拡大の支援に取り組んだのだが、多くの漁師はITに関する知識がほとんどなく、販売の受付もFAXか携帯メールのみ。ウェブサイトの作成や管理もできず、受付手段を変えることにも否定的であるなど、話がなかなかまとまらず苦労したそうだ。


岩手県大槌町のボランティアをきっかけとして、同町のほたて養殖組合の自立に向けたITによる販売支援を実施

 結果的にウェブサイト制作や管理はKDDI側が実施する形となったが、現在も現地で漁師達と酒を酌み交わしながら方針を話し合ったり、PCの使い方を教えたり、タブレットを用いて週に1回テレビ電話で進捗を取り合ったりと、積極的にコミュニケーションをとって信頼を得ながら、サポートを進めているとのこと。「東京とはスピード感が違うが、信頼を高めながら進めていきたい」(鈴木氏)。

 2つ目は経済支援で、そうした中でも大きな取り組みとなるのが、社内マルシェによる被災地県産品の販売支援だ。従来KDDIでも小規模の社内マルシェを実施していたが、売上も小さく貢献に至らなかったという。そこで鈴木氏らは、被災地から持ってきてもらった商品をすべて売り切り、“来てよかった”と言われるよう、同社のロビーを使って社内だけでなく社外の人にも来てもらえるよう、より大規模なマルシェの実施に至ったとのことだ。

 2014年8月に実施した、福島の県産品を扱う社外マルシェにおいては、復興庁の協力により復興大臣政務官の小泉進次郎議員が訪れるなどして大きな注目を集め、カフェテリアで提供したメニューや販売した産品もすべて売り切ったとのこと。その後の12月に開催された宮城県のマルシェではより大きな売り上げを記録するなど、規模の拡大によって大きな成果を出しているという。ちなみにKDDIでは、多くの社員が「au WALLET」を決済に利用していることから、社員がau WALLETで決済できる環境も用意。利便性を高めて販売増につなげる取り組みも実施しているそうだ。


復興マルシェの規模を大幅に拡大し、社員が決済しやすいようau WALLETにも対応するなどして被災地の産品販売を拡大。小泉復興大臣政務官の視察も実現している

若い世代のIT教育と年配者のコミュニケーションを支援

 そして3つ目の取り組みとなるのが、自立に向けた地域支援だ。被災地では特に若い世代の人口流出が大きな問題となっているが、それには地元に仕事が少ないことが大きく影響していると、鈴木氏は話す。しかし通信の力を使えば、インターネットを活用して世界中どこにいても仕事ができる。そうしたことを若い世代に知ってもらえるよう、ITを活かして地域が抱える課題の解決策を自分達の力で考えてもらうきっかけを作るため、KDDIでは2014年より、ライフイズテックと中高生を主体としたIT教育を実施するイベント「東北Innovators Program」を開催している。

 このプログラムは、東北各地から参加した中高生を主体としたメンバーがいくつかのチームに分かれ、5カ月にわたって地域の課題解決策に役立つアプリのアイデアを検討し、モックアップを制作するというもの。具体的には、まずアプリ開発やウェブ制作などの基礎知識を身に着ける2泊3日の集中キャンプを受け、その5回のオンライン講座を受講しながら、制作を進めていく形となる。


東北Innovators Program」には東北各地から21人が参加し、5か月にわたってITの基礎知識を身に着け、アプリのアイデアを形にしていく

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