NTTドコモ・ベンチャーズが運用するファンドから資金提供を受けてクラウド事業を展開しているリアルグローブ代表の大畑貴弘氏は、電子カルテや投薬データ、身体の測定データなど、医療やヘルスケアに関するさまざまなパーソナルデータを個人がクラウド上で管理し、医療機関や企業などに自由に提供できる「パーソナルデータエコシステム」を紹介。
医療機関などが保有する分散したパーソナルデータをひとつのフォーマットで個人に集めることで、データ収集/解析の効率化、医療の向上への貢献などの効果が期待できるという。匿名化してビッグデータとなった情報は、社会のヘルスケア全体に貢献できる資産になる。「こういった仕組みを作ったものの、正直身に余る仕組みを作ってしまったと感じている。私たちのようなベンチャーだけでこの事業を拡大できるとは思っていない。ドコモと一緒に作った仕組みをどうにか活かしていきたい」(大畑氏)。
進化計画は、企業の健康組合などを対象に組合員(=社員)の健康データ解析による健康管理支援プラットフォームを提供。健康に課題のある社員を抽出してケアできるハイリスクアプローチ分析技術「Salute(サリューテ)」、メンタルヘルスチェックなどから社員の生産性向上や疾病予防を推進する技術「Siren(サイレン)」、そして分析データを一元管理してビッグデータを分析するプラットフォーム「Propeller(プロペラ)」などから構成されている。
ビッグデータ分析に基づいてリスクのある社員を把握し適切にケアすることで、保険組合の医療費削減と社員の健康増進に貢献しようというものだ。代表の長島行人氏は「将来的にはBtoBからBtoCに事業領域を拡大していきたい。健診データや治療/投薬記録、ドコモのヘルスケア機器から集めたデータを基にヒストリーレコードを作ることで、さまざまなオポチュニティを生み出していくことができれば」と今後の展開を語った。
最後に登場した日本メディカルソリューションズ代表の山口浩行氏は、小規模診療所向け医療情報プラットフォーム「iMedsn(アイメディスン)」をプレゼンした。iMedsnは紙の書類による患者管理が多い診療所のデータ管理を改善することを目的とした低価格のクラウドプラットフォームで、キー入力をほとんど必要としない簡単な操作性、医療情報を安全に管理する堅牢性、最新の医用情報や医薬品情報を配信する利便性などを提供しているという。カルテなどを紙に書く時間を軽減することで、短い診察時間の中で患者自身を診る時間をより多く確保することが狙いだ。
現在はPC向けにサービスを提供しているが、ドコモと協業することによりモバイル分野のサービス拡充を行っていきたいという。患者のスマートフォンに検診結果や投薬記録の提供、診察予約や主訴症状の登録を事前に行うことができるアプリや、医師の訪問診療の際にiMedsnの機能をスマートフォンやタブレットで利用できるアプリなどを構想しているという。
それぞれのプレゼンテーション後には、ドコモの医療/ヘルスケア分野の各事業部の担当者による質疑応答があり、最終的には“今後協業を視野に話をしてみたい”という部署が挙手して立候補。今回登壇したベンチャー企業5社には全てにいくつかの事業部が手を挙げ、今後協業に向けて議論をしていくという。交流会でも集まった医療/ヘルスケア分野のベンチャー企業の経営者や開発者がドコモの関係者と熱心に議論していた。
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