一方、医療分野での展開について、西口氏は「医療とICTというテーマでは電子カルテ(PHR)などが想起されるが、ドコモはコンシューマに近い企業であるという特徴を活かして、生活者に密着したサービスができないかと考えている」と説明。
たとえば、生活者は自分の医療データを持ち歩いたりすることはできないが、同社が博報堂DYメディアパートナーズと共同で開発している「妊婦手帳」や、アインファーマシーズと共同開発している「電子お薬手帳」は“EHR化された医療データや投薬記録を生活者が管理することで、受診する病院を移った際や薬局で服薬する薬を相談する際などに活用することができないか”という発想から生まれたツールなのだという。
また、産学連携研究の例として、東京大学病院との社会連携講座で行っている研究内容を紹介。そこでの研究成果を商用サービスとして提供を果たした救急医療向けの「モバイルクラウド12誘導心電図システム」や、進行中の研究テーマである「糖尿病患者の自己管理支援プラットフォーム」の事例を紹介した。「ドコモは、医療分野で患者に寄り添ったサービスと医療従事者をサポートするサービスの両面から考えている。私たちが医療を提供することは不可能だが、その周辺で医療の質を高めたり、患者をサポートしたりすることに貢献できないかと考え、さまざまな可能性を模索している。技術やノウハウがある企業はぜひ参画してほしい」(西口氏)。
ドコモからのプレゼンテーションの後には、医療/ヘルスケア分野でドコモとの協業を希望するベンチャー企業5社が登壇し、それぞれのソリューションの強みや事業構想をプレゼンするスタートアップピッチを行った。
介護現場の日常生活で高いニーズがある介護リクリエーションという分野で成長しているスマイル・プラス代表の伊藤一彦氏は、「介護現場で働く人たちを支えるようなサービスを作りたい」と同社の理念を伝えたうえで、介護従事者を中心に6万人の会員を集めている介護リクリエーション素材の無料ダウンロードサービス「介護レク広場」、ユーキャンの通信講座や専門学校でも展開している公的資格「レクリエーション介護士」、介護レクリエーションに特化した求人サイト「すまいるワーク」など同社が展開しているサービスを紹介した。
「ドコモと協業することで、今後はスマートフォンやタブレットを活用したモバイル分野でも介護レクリエーションの世界を拡げていきたい」(伊藤氏)。
バーニャカウダ代表の古川亮氏は、女性向け電話カウンセリング予約サービス「ボイスマルシェ」を紹介。このサービスは友人や親族にはなかなか打ち明けられない女性の悩みを匿名性を担保したうえで電話でカウンセラーに相談できるサービス。2012年3月のローンチから会員数は順調に推移しているという。
ウェブサイトから24時間予約でき、独自の技術によってカウンセラーには相談者の名前、メールアドレス、電話番号などの個人情報は一切公開されない仕組みを提供する。カウンセリングする相談員は190名程度所属しているそうだ。「女性は悩みがあるが相談できない。その代わりとして占いが1兆円市場にまで成長している。大きな市場性があるのではないか」と古川氏。ドコモとの協業については、「インフラとコンテンツの相互補完性があるのではないか」と提案した。
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