成長社会から「成熟社会」へ--これからの働き方は“三方よし”がカギ

 朝日新聞社は1月15日、「未来メディアプロジェクト」の一環として、ゲストを招いて社会の課題を考え、テクノロジやメディアを使って解決するためのアイデアを出し合い学びあう「未来メディア塾 オープン・カフェβ」の第2回を開催した。

 テーマは「イクメン経営者と考える、未来の働き方」。ゲストに、三井物産ロジスティック・パートナーズ代表取締役社長でNPO法人ファザーリング・ジャパン理事、NPO法人コジカラ・ニッポン代表の川島高之氏を招き、「成熟社会に求められるシゴト、そして人生『三方よし』の未来の働き方」と題した講演会を開いた。


講演した川島高之氏

男性の力を求める地域社会、女性の力を求める企業社会

 川島氏はこの講演で、仕事だけでなく「家庭や子育て」「地域活動や社会貢献」をも充実させた“三方よしの人生”を提唱。性別に関係なく、「家庭か、仕事か」という二者択一や、「男は仕事、女は家庭」といった固定観念を捨て、男性も積極的に家事や育児、地域活動に参加し、女性も積極的に企業社会で活躍することの意義を説明した。

 講演の冒頭では、この提言の前提として、日本と欧米を比較した統計データを挙げ、日本の男性の家事・育児時間の低さや、企業における女性管理職比率の低さなどを紹介。6歳児未満をもつ夫の1日あたりの家事・育児の時間がスウェーデンの3時間21分、米国の3時間13分に対して日本が1時間である点、企業の管理職に占める女性の割合がアメリカ42%、フランス38%などに対して日本が10%である点などを挙げ、家事・育児への男性の参画、企業社会への女性の参画が求められていると指摘した。

  • 6歳児未満をもつ夫の1日あたりの家事・育児時間

  • 企業の管理職に占める女性の割合

  • 経営戦略上、企業における女性の活躍は不可欠

 特に女性の企業参画については、「労働力不足だから、というのは男性のオゴリだ」と川島氏は語り、家計支出の74%が妻(女性)の意思である点、企業格付けの評価項目の2割がダイバーシティ関連で女性が活躍する企業には資金が集まりやすい点、女性役員がいる企業は経営破綻確率を20%減らすことができガバナンスに良いという研究結果、優秀な人材の確保が可能になる点などを理由に、企業の経営戦略において女性の活躍は不可欠であると語った。

子育てに積極的に取り組むさまざまなメリット

 プロローグを経て、川島氏は家事・育児に積極的に取り組むことのメリットについて説明した。子育てを、狭義から広義まで「我が子の子育て(イクメン)」「いえのこと(カジメン)」「地域活動(イキメン)」「社会貢献(社会の人)」の4段階に分割。子どもの成長を見守る親にとって“期間限定の特権”である我が子の育児に積極的に取り組むことによって、家事が得意になったり、地域コミュニティと関わりを持ったりなどその活動範囲が狭義の子育てから広義の子育てへと拡がっていくと、そのメカニズムを語った。


我が子の子育てから社会貢献まで、すべてが「子育て」の一種

 川島氏は男性が育児に取り組むことのメリットについて、「子育てをすると家事が得意になって体力が増進したり、パパが家事をする姿を我が子に見せることで育児の効果が期待できたりする。パパの子育ては子どもにとってプラスになり、ママはストレスの軽減になり笑顔が増える」と語る。

 また、母親が中心になることが多い地域コミュニティは男性の参加を熱望しているそう。PTAや学校の父母会、子育て支援の取り組み、スポーツのコーチ、お祭りやイベント、防犯・防災活動など男性が活躍できる機会はたくさんあるのだという。職業や世代を超えた地域社会の人付き合いが生まれる点も大きな魅力だ。

 「自分の能力を仕事だけに発揮したり、家事・育児だけに発揮したりなんて、もったいないのではないか。その能力を地域や社会で発揮していこう。お金よりも価値のあることを得られるはずだ」(川島氏)。

 一方、川島氏は自身が地域活動で多くの父親、母親と交流して感じることとして、「“笑顔のないパパ”をよく見かける」「“ストレスに疲弊したママ”をよく見かける」「“自分に自信が持てない子ども”をよく見かける」と気づきを紹介。育児を楽しみ笑顔あふれる父親を増やすことや、大人が“子どものチカラ”を信じることで、子どもが自信を持って生きていけるための活動をする必要性を指摘した。そして、“ストレスに疲弊したママ”を減らすためには、会社で部下の“子育てと仕事の両立”に配慮することができる上司や管理職・経営者=イクボスを増やす必要性を訴えた。


部下の“子育てと仕事の両立”に配慮することができる“イクボス”

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