続いて、グローバル規模でスタートアップを支援しているMicrosoft Ventures(MSV)について、プリンシパルのZook氏は「39worksと同じく“失敗することを恐れない”という考えが根底にあり、格好悪くても、プロダクトの完成度が低くても、とにかくアイデアを実行に移していこうというフィロソフィで支援していくことを目標にしている」と説明。アイデアしかないアーリーステージにおける事業開発支援から、起業したベンチャー企業に対するアクセラレータプログラム、実績が出ているスタートアップに対する協業プログラムまで幅広く展開しているとMSVの特色について紹介した。
MSVは約1年半の取り組みで約270社が支援プログラムを卒業し、80%の企業は卒業後の資金調達に成功。そして16社はM&AによりMicrosoft、Google、Yahoo!などの企業に買収されているそうで、支援プログラムでスタートアップした企業が買収されてしまうことについては「ちょっと複雑」と本音を漏らす場面も。アクセラレータプログラムは5カ国でグローバル展開しており、日本からもすでに2社が参加しているのだそうだ。「今までは、まずシリコンバレーにフォーカスしてそこから世界へ、という構図だったものが、ここ3年で変わってきている。これからは、さまざまな国や地域でイノベーションが生まれるのではないだろうか」(Zook氏)。
また、「参加企業にとってはどのようなミートアップがあるのか」という別井からの問いに対して、Zook氏は「アクセラレータを募集するプログラムやさまざまなイベント、クチコミなどが多い。スタートアップを募集する企業同士での情報交換も盛んで、非常にオープンな環境ではないだろうか。本業では競合している企業同士でもこの領域だけはオープンに助け合っている」とコメントした。
伊藤園で販売促進を担当する角野氏は、かつて米国内で営業活動をしていた際にシリコンバレーで若いスタートアップと交流機会があり、それがきっかけとなって企業としてスタートアップを支援していくためにさまざまな企画を打ち出しているのだという。
「シリコンバレーで営業活動をして一番よかったのは、現地で開かれたミートアップに参加して若いスタートアップと話をする中で、やりたいことにチャレンジをするキラキラ輝く人たちに魅了されたこと。彼らの挑戦に何か関わっていきたい、スタートアップを応援するために何かコラボレーションできないかと考えるようになった」と角野氏は当時を振り返る。
そこで、角野氏は「スタートアップを伊藤園の流通網を使って宣伝できないか」という考えのもと、シリコンバレーでも数多くのテクノロジ企業が導入している「お~いお茶」を“クリエイティブ・サポート・ドリンク”と位置づけ、特設サイトを立ち上げて日本のスタートアップを紹介したり、米国Evernoteとコラボレーションして“シリコンバレー特派員”を募集するキャンペーンを展開したりした。そして伊藤園ならではの取り組みとして、お茶とITによって世界中の人々と繋がる方法を考える 「茶ッカソン」を開催した。
角野氏は茶ッカソンについて「他がやっているハッカソンと同じことをしても仕方がない。伊藤園だからこそできる、日本文化とITを融合したハッカソンをしたいと考えている。次回の茶ッカソンでは、茶殻で作った畳を会場に敷いて参加者全員でまず座禅をやり、お茶を飲んで毎日情報で溢れかえっている頭をリセットしたところから新たなアイデアの創造を始めてみたい」と意欲を語った。
また角野氏は、日米のスタートアップに対する意識の違いについても言及し、「シリコンバレーにいる人たちの美学は、アイデアを思いついたらすぐに全てを発表して、さまざまな人からの意見を取り込んだり、支援してくれる人とネットワークしたりしようとすること。アイデアを早く世の中に出していこうという姿勢によって共感や支援が生まれて世の中が変わっていくのがアメリカの風土だ。それに対して日本ではいいアイデアがあったときにそれを自分だけのものにして隠したり、成功した人を妬んだりする性格があるのではないか」と指摘。
世の中を変えるような斬新なアイデアに対してコミュニティ全体で後押しし、アイデアをイノベーションに成長させるという構造が、数多くの新興企業を世界に送り出してきた背景にあることを説明した。
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