朝日インタラクティブは12月4日、ITビジネスのオンラインメディア「CNET Japan」のカンファレンス「CNET Japan Live 2014 Winter 『ボーダレス』がマーケティングの決め手 ~組織・手法・技術の垣根を取り払う~」を開催した。
ここでは、「広告やメディアで人を動かすのをあきらめる時代!?」と題したパネルトークセッションの内容をレポートする。登壇者は、ブルーカレント・ジャパン代表取締役社長の本田哲也氏、LINE上級執行役員法人ビジネス担当の田端信太郎氏、モデレーターはCNET Japan編集長の別井貴志だ。
本田氏と田端氏といえば、書籍「広告やメディアで人を動かそうとするのは、もうあきらめなさい」を出版し話題を呼んだ。今回のセッションは、その書籍の内容を踏まえながら、広告やメディアのこれからについて議論された。
SNSなどによって消費者も情報発信ができる現代は、企業や広告主のコントロールができない時代と言われている。こうした現在の社会について、田端氏は「これまでのようにマーケターが施策をロジックで考え、人を動かそうとするのは難しくなった」と指摘する。
「広告だということに、消費者も気づいている。もはや、消費者は望み通りには動かせない時代にある、ということをきちんと認識しなければいけない。これからは、アンコントローラブルなものを受け入れるという気構えが求められている」(田端氏)。
本田氏は、そもそもの人間社会がアンコントローラブルである、という普遍的なものに回帰してきたことを認識すべきと指摘。これまではマーケティングが発達して偶然に人を動かせただけだとし、アンコントローラブルな中でいかにコントロールできるかを地道に考え、泥臭いことを続けていくかがマーケターの本来の仕事であると語る。
こうした時代や社会の転換期において、マーケターの存在そのものが問われていると田端氏は話す。「人を動かそうとする前に、一人の人間であるマーケターが心の底から商品に魅力を感じているのか。物事の上辺だけを見るのではなく、情熱がきちんとあればお金がなくてもできることはあるはず」(田端氏)。
それらを踏まえた上で、「書籍のタイトルに則って本来言いたかったことは『ダメな商品や製品を、CMや広告で買わせそうとするのはやめさない』ということ。これを特に上流にいる人たちは理解した上で、渾然一体とならないといけない」と指摘した。
本田氏も、改めて製品や商品の本質を考えることが重要だと語る。「製品価値は、製品の魅力にメディアや広告コンテンツが掛けあわさって初めて意味をもつ。しかし、ゼロに何を掛けてもゼロにしかならない。ソーシャルメディアなどが発達して、いい意味で価値が増幅しやすくなったが、それは掛け算の後半の話。製品やサービスそのものの魅力や良さを改めて問い直さないと意味がない」(本田氏)。
メディアそのものは、伝えたいことを伝えるためのツールであるが、もはや誰もがメディアの時代においては、シグナル効果は期待されない。もちろん、マスメディアとソーシャルメディアによって、届けられる人の規模やスピード感、消費者との距離感も違う。メディアの多様化にともない、どういった規模のどのような人たちに情報やメッセージを届けたいのかを考えながら、メディアを活用するべきだと本田氏は語る。
「例えるならば、ゴルフクラブのようなもの。ツールの飛距離や精密性などによって、メディアというグラブを使い分ける必要がある」(本田氏)。
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