米国と英国でExplorerプログラムとして発売が開始された「Google Glass」、だがGlass向けのアプリ開発が進まず、eBayで出回る中古品も半値を付けるなど、一般コンシューマー向けの発売を前に「失敗」説もささやかれている。
そんな中で、「Google Glassへの投資を継続する」と明言するのが旅行サイトExpediaだ。11月に米サンフランシスコで開催された「Open Mobile Summit 2014」でExpedia最高製品責任者のJohn Kim氏が、Google Glassへの期待を語った。
Google Glass失敗論は8月後半ごろからささやかれていた。9月の「Apple Watch」発表でウェアラブル開発者の関心がAppleのスマートウォッチに移ったことで、11月にはReutersがGlassに懐疑的なアプリ開発者の心理を詳細に報じ、話題となった。
Kim氏は、このように“登場前から失敗している”という見解を認めながらも、まず、自身のGlass体験を簡単に紹介した。Glassを装着し、ナビゲーションや写真撮影を試してみたというKim氏は、「ウインクすると写真が撮影できると聞いて、やってみたら周囲は混乱した」「トイレに入るときに付けたままでよいのか迷った」と笑いながら、「Glassの機能は正しいタイミングで適切な用途に使わなければならない」とまとめる。
なかでも、周囲への配慮は大切だ。「おもしろがる人もいれば、“私の写真を撮ってるの?””録画しているの?”と嫌がられることもある」と注意する。「最大の驚き」は、Google+のアカウントと連携させていたことから、家族や友人がKim氏が次々と撮影する写真に驚いていたことだという。「Google+に次々とアップされることもびっくりしたが、自分のアカウントをフォローしている人がいることにも驚いた」と笑いをとった。
このような体験談の後、Kim氏はGlassの成績表として、ギークに見えるという点でA+(「究極のギークデバイス。Glassを装着すればギークと思ってもらえること間違いなし」)、社交的にまずいという点でA+(「ブラインドデートにGlassを装着していけば絶対失敗する」)とし、総合評価も「A+」をつけた。
では、なぜExpediaはGlassに投資するという決断を下したのか――Kim氏は3つのポイントを挙げた。
1つ目は「インターネットを付けている」というパワーだ。Kim氏は「Glassをかけていることは、インターネットを装着しているのと同じ。目の前でインターネットのパワー、瞬時にナレッジにアクセスできるパワーを得られる」と述べる。
2つ目は、Glassやウェアラブルがつくるこれまでとはまったく異なる状況だ。「HTMLもマウスもないし、セッションもない」とKim氏、そのかわりユーザーは24時間365日オンですぐにアクセスできるという環境にある。「そのような端末をどのようにして活用するか、考えなければならない」と課題を語る。PCやスマートフォンのようにExpediaのウェブサイトを目の前で表示するのは不適切であり、これまでとは考えとアプローチを変える必要がある。
これに対して、Expediaが考えている解は「アラート」や「通知」だ。「人々が欲しているのはアラートだ。HTMLではなくデータだ」とKim氏。以前検索していた往復の航空券の料金が変更されたなどのデータを適切なタイミングにリアルタイムでプッシュすることが考えられるが、重要なのは「関連性」だ。検索や利用のパターンに基づき、ユーザーが探している情報はなにかを察知できる仕組みが必要だという。「ウェラブルをトリガーする体験をどのように再定義するか――どのようなイベントがトリガーするのか、プッシュ通知を送る間隔はどれぐらいか、などを探る必要がある」(Kim氏)。
課題へ取り組むにあたって、「少しずつの変化」というのがExpediaのアプローチだ。同社は1月、ウェブサイト向けに3つの新機能を発表しており、ここではそのうちの「Flight Recommendations」と「Scratchpad」を紹介した。
Flight Recommendationsは1日に30億件以上に及ぶ同社のフライト検索のビックデータを解析し、コストや利便性の点から利用空港や日付を変えた代案を提案するというもの。多くのユーザーが日付や到着時間を変えて検索し、利用空港を変えて検索し、その後その新しい空港で日付を変えて検索し...というパターンで行動している。クエリを予期して最適なものをプッシュできれば、とKim氏は展望する。「Glassのようなウェアラブルでは、(ウェブサイトよりも)パワフルな提案になる」と続ける。
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