タクシー市場を揺るがす配車アプリサービスUber(後編)--浮き彫りになる問題点

 2013年12月に、Uberのアプリをオンにして客待ち状態だったUberXのドライバーが横断歩道で少女をひき殺した事件で、自動車保険の問題が浮き彫りとなった。ドライバーが個人で加入している自動車保険は、営業目的で運転していた場合は有効でない。一方、Uberは「乗客を乗せていなかったので会社に責任はない」という立場である。

 しかしこの後、同社はドライバーが客待ちの間に事故を起こしてもカバーする保険を提供開始した。9月にはカリフォルニア州で、客待ち状態時もドライバーをカバーする新たな保険加入が法律で義務付けられた。

 なお、Uberは、ドライバーと共に遺族に訴えられているが、「独立業務請負人であるドライバーが起こした事故の賠償責任は会社にない」と反論し、係争中である。また、利用者はドライバーのレビューを確認してから配車をリクエストでき、かつドライバーの犯罪歴もチェックしているので安全と宣伝するUberだが、ドライバーが乗客に暴力をふるったり、痴漢・セクハラ行為をしたりして、ドライバーが逮捕される事件も生じている。逮捕されたドライバーの中には、重罪の前歴がある者もいた。つい最近では、サンフランシスコで、走行ルートで口論となり、ドライバーが乗客をハンマーで殴って重傷を負わせている。

募るドライバーらの不満

 一方、「パートナー」と呼ばれるドライバーの間でも、Uberに対する不満が募っており、9月には、ニューヨークやサンタモニカでUberX(個人がマイカーを使ったサービス)のドライバーによる抗議デモが行われた。Uberでは、同様のサービスを提供するLyftと熾烈な価格競争を繰り広げており、7月に25の都市で10~20%の値下げをしたのだが、夏限定のはずが無期限の値下げとなったのが引き金となった。

 Uberではドライバーらに、毎日の洗車、毎月ディテール、定期的にオイル交換をして、乗客向けには飲料水やミントを提供するよう奨励しているが、「料金を下げられては、車の保守や顧客サービスはできない」とドライバーらは言う。

 また、9月2日以降、サンフランシスコで新たにドライバーとして働き始めると、Uberの手数料が過去最高の25%になり、ドライバーの取り分は減る一方だ。ドライバーの経費は、税金やガソリン、車の保守費、自動車保険で売上の20~30%になると言われ、Uberのドライバーを辞めた人たちの中には、待ち時間や車の減価償却も計算に入れると時給2ドルほどしか稼いでなかったという人もいる。その上、事故でも起こせば赤字どころか、自己破産もあり得る。独立業務請負人扱いなので、労災も医療保険も失業保険もない。

 当初、Uberではドライバー募集広告で、一時間に35ドル稼げると宣伝していたのだが、その後の広告では18ドルに下がっている。「こんなに稼げるのか」とドライバーとして働くために、新たに自動車を購入した人もいるという。しかし、UberがiPhone 4Sデータプランの利用に週10ドルを課金し始めてから、「暇なときだけ働こう」と思っていた人には赤字に陥り、辞めた人が続出したようだ。

 さらにUberでは「料金の20%は自動的にチップとしてドライバーに払われるので、チップは必要ない」と乗客向けにサイトで説明しているにもかかわらず、ドライバーらは「Uberから受け取っていない」と言う。これに関してUberは、ボストンではドライバーらに、サンフランシスコでは乗客から訴えられている。

 UberXを、時間の空いているマイカー所有者と乗客をリアルタイムでマッチングするP2Pと考えている人も多いだろうが、実際には、これで生計を立てようというドライバーも多く、タクシーの運転手から転向した人たちもいる。なお、米国ではタクシー運転手の大半が移民であり(ニューヨークでは92%)、Uberの運転手らも同様である。

 ドライバーらが「Uberにとってドライバーが最大の資産」と言うように、無人自動車が実用化するまでは、いくら優れたアプリがあっても配車サービスはドライバーなしでは成り立たない。最低賃金以下の移民の低賃金労働でしか成り立たないビジネスモデルであれば、ファーストフード業界と同じである。グーグルのシュミット会長は「ハイテク職はローテク職より賃金が高く、欧州の失業問題を解決するにはデジタル起業が必要」と説教したが、欧州がUberの進出を危惧するのは無理もないかもしれない。

配車アプリサービス「Uber」(前編)--既存企業との戦い
有元美津世(ありもと みつよ)
大学卒業後、日米企業勤務を経て渡米。MBA取得後、独立。16年にわたり日米企業間の戦略提携コンサルティング業を営む。現在は投資家。在米26年。
著書に『英文履歴書の書き方Ver.3.0』『ビジネスに対応 英語でソーシャルメディア』(ジャパンタイムズ)、『図解米国のソーシャルメディア・ビジネスのしくみ』(あさ出版)、『英語でもっとSNS! どんどん書き込む英語表現』(語研)、『英語でTwitter!』『プレゼンの英語』『面接の 英語』(ジャパンタイムズ)
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