Appleの最高経営責任者(CEO)であるTim Cook氏は2013年、世界で最も注目される消費者向け電気機器メーカーであるAppleが、大きな成功を収めているスマートフォン、タブレット、コンピュータ以外の新たなカテゴリに、間もなく「素晴らしい」製品を投入する、と述べるようになった。
その時期は、今をおいてほかにない。
Appleは、同社最大のドル箱製品である「iPhone」に大画面を採用した新モデルを、米国時間9月9日に発表する見込みだ。これは、宿敵サムスンの大画面端末に魅了された顧客を奪い返すための戦略とみられている。Apple観測筋によると、いわゆる「iPhone 6」は画面サイズ4.7インチと5.5インチの2つのバージョンが登場すると予測している。これは、2013年に登場したiPhone 5sの現行の4インチディスプレイを超えるデザインとなる。
Appleは2007年にiPhoneを世に送り出して以来、毎年その新型をリリースしているため(何といっても、iPhoneはAppleの売り上げの半分以上を占めている)、新モデルの登場は驚くに当たらない。3年前にSteve Jobs氏の後を継いでCEO職に就いたCook氏は、かつての上司が築き上げた市場とは別の新しい市場には依然として進出していないが、今回まさにそれを行って、Appleの才能は枯れ果てたとする批評家たちを黙らせるものと期待されている。
すでにファンの間で「iWatch」と呼ばれているApple初のウェアラブル端末は、2種類のサイズが用意され、曲面ディスプレイを搭載し、その素材には、透明性と堅牢性が非常に高く、世界のほとんどの高級腕時計で使用されているサファイアガラスが採用されると言われている。また、モバイル決済に対応するためにNFCチップを搭載し、他の端末(まずはiPhone)とスムーズに連携できるという。
AppleのチーフデザイナーであるJony Ive氏はそのデザインに自信を示し、スイスがトラブルに見舞われると発言したと伝えられているが、同氏が正しければ、AppleはCook氏が約束しているとおり「素晴らしい」製品を披露することになるかもしれない。
それこそ、まさにAppleに求められていることだからだ。
Appleは、Jobs氏が2010年に「魔法のような」タブレット「iPad」を発表して以来、新しいカテゴリに進出していない。それ以降にリリースされたiPhoneやiPad、「Mac」コンピュータの新バージョンは、批評家や消費者から「革新的」というよりも「進化的」と評価されており、利益と売り上げの成長率鈍化につながっている。Appleの売り上げは、iPhoneとiPadがその3分の2を占めているが、こうしたガジェットの市場は飽和しつつあり、Amazon、Google、Microsoft、サムスンといった競合がユーザーを奪い合い、また、ユーザーがモバイルデバイスに費やす莫大な金額を巡って、各社が争っている。
競合他社が新製品投入を早めるなかで、投資家たちは気をもみながらAppleの動向を見まもっている。Appleの株価は6月に実施された7対1の株式分割後、最高値を記録しており、9月5日の通常取引終値は98.87ドルだった。
「他社の多くは、Appleほど頻繁に大胆な製品展開を求められていない」。コンサルティング会社Altman Vilandrie & Coのディレクター、Soumen Ganguly氏はこのように述べた。だが、人々はAppleにそれを期待するようになっているとGanguly氏は付け加えた。「最後に投入した素晴らしい製品から、良さは変わっていない。その状態がもう4年も続いている」(Ganguly氏)
Appleはコメントを控えた。
「素晴らしい」の定義は人によって異なるが、多くの人にとっては、あるカテゴリを再定義するほどの画期的なデバイスという意味だ。初代iPhoneの登場はスマートフォン市場を変え、タッチスクリーンを普及させた。iPadは、タブレットコンピュータの概念をめぐって長年手をこまねいていた他社を尻目に、タブレットへの期待に応えた。
大型画面のiPhone 6は、この定義に当てはまるとは言えない。だが、ウエアラブルは、Appleの競合がすでに多数参入している市場であり、定義に当てはまるかもしれない。
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