18歳からの著作権入門

青空文庫を知っていますか? ~著作権には期間がある

福井健策(弁護士・日本大学芸術学部 客員教授)2014年08月29日 11時00分
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 「18歳からの著作権入門」第15回。連載もついに予定の4分の3に達しました。今日は、特に重要な著作権の期間のお話。

 皆さん、よく駅や新聞広告などで映画のDVDがとっても安く売っているのを見ませんか。昔は「500円DVD」なんて言われましたが、今やもっと安いですね。セットで1枚200円以下の価格まであります。普通、映画のDVDというと安くなったとは言っても1枚1500円以上はしますから、200円とは驚きですね。あれは何でしょうか。海賊版?

 よくパッケージを見ると、しばしば「この映画は公表から50年以上経ったPD作品です」なんて書いてあります。PDとは「パブリック・ドメイン」の略で、「著作権が切れているから誰でも作品を利用できるよ」という状態を指すのです。

死後50年経過で著作権消滅

 著作権には期間があって、それが過ぎると誰でも自由に利用できるようになります。いわば、作品は社会の共有財産になるのですね。現在は、「著作者の生前全期間+死後50年」が原則です。つまり著作者(クリエイター)が生きている間はずっと保護され、その死亡の翌年の1月1日から起算して50年経過後の年末に、著作権は消滅します。これは、かなり長い期間です。仮にクリエイターが創作から30年生きたとすると、30年プラス死後50年で合計80年間。同じ「知的財産権」でも、特許権と比べるとだいたい4倍もの期間があります。

 ただし、ペンネーム(変名)や匿名の場合、いつ亡くなったかよくわかりません。また団体名義の作品の場合、死にません。よって、こうした作品は死後ではなく、「公表の翌年から50年間」の保護になっています。作品はたいてい生前公表されますから、これは普通、死後50年より早く到来します。長生きの方など、場合によっては生きている間に著作権が切れてしまうかもしれません。それを避けるためには、公表から50年が経過する前に、実名で作品を公表し直せばいいのですね。今はネット発の作品など変名・匿名が多いので、そんなケースもいずれ増えるかもしれません。

 まだあります。映像作品の場合には、実は著作者は監督だけとは限らず、プロデューサーやカメラマンなど、複数いるかもしれないのです。複数の著作者がいる場合は、その最後に亡くなった方の死後50年と数えるのが原則ですが、映画の場合、候補が多くて誰と誰が著作者なのか外からはわかりにくい。そこで映画は死後起算ではなく、「公表から70年」となりました。以前は公表から50年でしたので、1953年以前に公表された映画は、公表後50年で保護期間が切れるのが原則です。

 以上が、廉価版DVDの秘密です。つまり、「1953年以前の映画は著作権が切れている」といった理解でPDと判断して売っているのですね。ところが、これにはふたつの留保が付きます。

 第一には、実は古い映画は、今の著作権法の前の「旧著作権法」からの経過規定があって、監督などの没年によってはもっと長く守られることがあるのです。現に、チャップリンの1910年代の映画や黒澤明の1940年代の映画など、とっくに著作権が切れていそうな作品の廉価版DVDについて、「まだ保護期間が続いている」という判決が出たりしています。

 この旧著作権法は結構クセ者で、古い映画はいつ著作権が切れたかよくわからないのが現状です。いつからPDか誰にもわからないのは知的財産制度として最悪ですから、早期の法律の手当が望まれます。

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