UPDATE 「What Makes Apple, Apple」(AppleをAppleたらしめているものは何か)という講座の中で、講師はApple従業員らに対し、78個ものボタンが付いた「Google TV」用のリモコンを示すスライドを見せる。その後に、3個しかボタンのない「Apple TV」のリモコンを見せるのだ。
シンプルさを追求するAppleの信念を表すこの話は、「Apple University」として知られる同社のトレーニングプログラムでの一幕である。The New York Times(NYT)は米国時間8月11日、めったに明かされることのない同プログラムの内容を紹介した。講座を受講したことのある3人のApple従業員が、匿名を条件に同プログラムの内容を同紙に語った。
AppleはNYTに対し、同プログラムの詳細を明かしたり、講師のインタビューを許可したりすることを避けた。講師の中には、ハーバード大学、イェール大学、マサチューセッツ工科大学(MIT)の出身者もいるという。講座の様子を示す写真は一切公開されていないと、NYTは記している。
Apple Universityは2008年、Appleの共同創設者で元最高経営責任者(CEO)の故Steve Jobs氏によって設立された。Jobs氏は、当時イェール大学マネジメントスクールの学長だったJoel Podolny氏を、この新しいプログラムの統括者として採用した。このトレーニングプログラムは、アニメーションスタジオPixarにおける「Pixar University」という類似のプログラムに倣ったものだった。PixarもJobs氏が共同創設した企業である。
Apple Universityは、同社が成長を遂げる中においても、製品をシンプルにするというJobs氏のアプローチを維持する上で、新たな重要性を帯びる可能性がある。また、8月のBeats買収の完了に伴い、同社に新たに加わった多数の従業員を統合する上でも、有効なツールとなる可能性がある。30億ドルでのBeats買収は、同社史上最大規模の買収だった。
NYTは、「Communicating at Apple」(Appleにおけるコミュニケーション)という講座を紹介している。その中で講師は、Picassoの「The Bull」を元にした11枚の絵を見せる。スライドが進むごとに、雄牛の細かい部分が取り除かれていき、最後には棒線画のみが残るという。
「非常に簡潔な方法でメッセージをシンプルに伝えることができるようになるまでこのようなことをさらに繰り返す。それが、Appleブランドとわれわれが行うことすべてに忠実であるということだ」と受講者の1人はNYTに語った。
シンプルさの信念は、Jobs氏の基本的な服装から簡素な直営店や同社製品にいたるまで、同社全体に浸透している。「iPhone」や「iPad」からはキーボードとマウスが取り除かれ、1枚のフラットなタッチスクリーンと丸いホームボタンのみになっている。
NYTによると、Appleのキャンパス内にあるスタジアム型の座席が並んだ台形状の明るい室内で、講座が開かれるという。同社が採用したビジネス上の決断を従業員に教える講座もある。例えば、「iPod」や「iTunes」を「Windows」に対応させるという決断だ。この問題については、幹部らの間で熱く議論が交わされ、Jobs氏は、Appleの技術をWindowsに共有するという発想に不快感を示した。しかしその決断は、最終的にはiPodの急速な成長をもたらし、iPhoneの成功につながる道を切り開いた。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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