企業や組織のリーダーを対象にしたGoogleの基幹イベント「Google Atomosphere Tokyo 2014」が開催された。イベントのテーマは「働き方の、これから。−Transforming Work」。企業や組織が求められるべき働き方について考えるセッションや講演、Google製品のハンズオンの体験などが実施された。
ここでは、「Google 製品で創る21世紀の学習環境」と題したセッションの内容をレポートする。グーグルのエンタープライズ部門教育担当日本統括責任者の菊池裕史氏、広尾学園中学校・高等学校 医進・サイエンスコース教諭の堀内陽介氏が登壇し、Google Apps for EducationやChromebookを活用した学習環境の事例について話した。
Googleは、メールやハングアウト、カレンダー、グーグルサイト、グーグルドライブなどの既存の機能を教育機関向けにパッケージ化した「Google Apps for Education」を提供している。最近では、企業や教育機関向けにChromebookも活用している。
日本ではまだ公開されていないが、米国でスタートしている教育機関専用アプリストア「Google Play for Education」は、小・中・高校で導入される教育用Androidタブレット専用のアプリストアで、課金や広告を防ぐための保証バッジ機能など、Googleが選定したサードパーティ製のアプリが提供されている。カテゴリも学年や科目ごとに分かれており、それぞれの学習環境に応じたアプリを見つけられるという。ほかにも、GoogleはEdxと提携しており、今後はMOOCsによるオンライン教育コンテンツも発信していくかもしれないという。
「20世紀までの画一的で同じ知識、同じ問題解決方法を持った人材育成としての教育ではなく、クリティカル・シンキング、クリエイティビティ、コミュニケーション、コラボレーションといった要素や情報メディアリテラシーなど、さまざまなスキルが求められている。こうした、21世紀型のスキル向上を目的としたツール開発を、Googleは展開していきたい」(菊池氏)
広尾学園の堀内氏は、従来の知識偏重ではなく、考えることを重視した教育環境を提供するために、教員や生徒が一緒になって考える「協調学習」を実施しており、その一環として世界の研究事例を調査し、秋に生徒たちに発表させる研究活動を実施している。そこで、ウェブサイトの積極的な活用やグループウェアと端末を利用するために、グーグルと協働してGoogle Apps for Educationを活用したという。
「検索やメール、ドキュメントなどのやりとりや共有をいつでもどこでも、デバイスを選ばずにリアルタイムに使えること、情報がクラウド上で自動的に更新されることは、教育活動において必要な要素。それが提供できる教育ツールとして、導入を決意した」(堀内氏)
当初はiPadを導入したが、生徒たちはiPadを論文閲覧用として自発的に使い出し、ノートPCによる資料作成や手書きノートによるメモなど、デバイスの使い分け始めたという。そこで2013年から試験的に使用していたChromebookを導入した。導入理由として、資料作成などにノートPCが適していること、起動が早く、ウェブサイトにすぐにつながるため作業の導入時間が早いこと、タブレット並みの軽さやコスト面などのメリットがあげている。
「Google Apps for Educationを活用して、定期的にあるプレゼンの資料を共有したり、海外の遠隔地でも共同作業ができたりする。メールは研究チームごとにタグ付けしているため、管理や検索も容易。研究に関する普段のコミュニケーションや質問などが活発にできている」(堀内氏)
授業においても、堀内氏は反転授業を導入。自宅にて動画コンテンツを生徒たちに閲覧してもらい、事前学習をした上で授業中は生徒同士のディスカッションなどをし、生徒間の意見を聞いたり話したりする場を重視しているという。堀内氏が担当している医進コースだけでなく、別コースにもGoogle Apps for Educationを導入したところ、「Googleサイト」で学年サイトを立ちあげ、中間考査の回答や範囲、係や委員会からの連絡サイトとして利用しているという。
こうした導入による教育現場におけるメリットとして、端末管理などが容易で、さらに配布した端末を生徒たちが自分たちで試行錯誤しながら活用方法を模索することにより、自律心を持って行動できるようになったという。また、これまでの既存教育との大きな違いは、「共有」の概念が教育現場に入ったことだと語る。
「教員から生徒へ一方的に教える方法は、自分1人による学習で完結しがち。しかし、自分の知識や考えを他人と共通し、ともに考えながら答えを模索したりアイデアを導き出したりする意識を持つことで、これからの社会に必要なスキルが自然と磨き上がってくる」(堀内氏)
端末配布によるペーパーレスと情報のリアルタイム共有は教師側の負担軽減もあり、これまで大量な冊子や紙を印刷していた労力とコストが減少したという。
デメリットとして、自律心の裏返しである生徒自身のモラルやリテラシーが求められることだ。また、いつでもどこでも作業ができてしまう環境のため、生徒や教員のオーバーワークの可能性もある。利用に対して適切な時間や節度、意識が求められるという。また、家庭内でもノートPCに向かって作業する様子に、不安を覚える親も少なくない。そのため、利用に際して家庭でルールを設け、ツールの扱い方を適切に考えるなど家庭と教育現場との連携も必要だという。
「テクノロジやツールは、きちんと活用すれば大きな武器になる。これまでの教育現場における知識偏重から脱却し、自分たちで考え、行動し、本物を知るきっかけになってほしい」(堀内氏)
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