近年、「モノのインターネット(Internet of Things:IoT)」が急速な広がりを見せている。米国IDCの予測によると、2020年におけるIoTの世界市場規模は8兆9000億ドル(約900兆円)に達するという。このIoT市場を牽引すると期待されているのが自動車業界だ。Googleは6月、米国サンフランシスコで開催した開発者会議「Google I/O」において、自動車向けのプラットフォーム「Android Auto」を発表した。
「Android Auto」は、Android OS搭載デバイスを自動車に接続するだけで、デバイスと同様の操作性でナビゲーションや検索が利用できるものだ。7月30日から2日間の日程で開催されているGoogleの基幹イベント「Google Atmosphere Tokyo 2014」では、同社の車載器上のサービスを紹介するセッション「Google for Automotive & Telematics」が設けられた。
登壇したGoogle日本法人エンタープライズ APAC Automotive ビジネスデベロップメントマネージャーの中島謙二氏は、2013年の米国における自動車事故原因の25%が、スマートフォン操作による「よそ見運転」だったと指摘。「安全性を確保しつつドライブ中の利便性を向上せさるといった取り組みは、業界全体で行っていく」と、自動車に最適な情報端末の必要性を訴えた。
Googleは1月、Androidプラットフォームの車載促進を目的とするアライアンス「Open Automotive Alliance(OAA)」を立ち上げた。現在は25の自動車会社が参加している。Android Autoを搭載した自動車は、2014年中に発売される予定だという。
自動車がインターネットに接続すると何ができるのか――。中島氏は「Google Mapを利用すれば、ルート案内や交通情報がリアルタイムで提供できる」と語る。
Google Mapには複数のAPI(Application Programming Interface)が用意されており、サードベンダーが自社のサービス/アプリケーションに組み込んだり、Google Map上に独自の情報を表示させたりすることが可能。たとえば、リアルタイムの位置情報を活用してトラッキングサービスを提供することができる。
中島氏は「Google MapおよびGoogle Map APIは世界最大の地図データベースであり、インターネットユーザーの41%が利用している。月間アクティブユーザーは10億人にも及ぶ。グローバルで均一なクラウド型サービスだ」と語り、オンライン地図のデファクトスタンダードになっていることを強調した。
また、Google自身がAndroid OS搭載デバイスから(許可を得て)収集したデータをもとにサービスを提供している事例も紹介。たとえば、渋滞情報をリアルタイムで提供し、目的地までの所要時間を予測する「Google Direction API Traffic Information」は、Googleが独自に渋滞状況を分析している。位置情報データから自動車で移動している端末を抽出し、その移動状況から速度を割り出す。一例だが、幹線道路で複数のデバイスから低速度での移動状況が確認された場合に、渋滞と判断しているという。
インターネットにつながる車にとって重要なのは、クラウドプラットフォームである。多くの企業は、地図データや位置データを、自社が所有する顧客データなどと合わせてアプリを開発し、特定の端末で稼働するようにしたいと考えている。なお、ハイヤー配車サービスの「Uber」はGoogle Map APIを活用しているという。
逆に、エンジンの回転数や走行速度など、自動車の稼働状況データ(いわゆるビッグデータ)も収集可能だ。中島氏は、今後登場する可能性のあるサービスについて、「こうしたデータをきちんとした形で活用すれば、今までにない新たなサービスを提供できるようになる」と語り講演を締めくくった。
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