この3社に共通しているのは、リアル領域をいかにしてネット化していくかという発想のもとに事業を構築していることだ。ラクスルの松本氏は印刷EC業界では、既存の大手プレーヤーがネットを取り込みにいくよりも、ネットが既存領域を取り込むほうが顧客価値を作りやすいと説明する。
たとえば、大手の印刷会社では自社で印刷機を持っており、その印刷機に最も適した生産方法を選ぶ。そのため「特定の領域の商品しか取り扱えず、ユーザー本位で事業を作りにくい」と松本氏は指摘。ラクスルは印刷機を持たず生産を外部に任せられるため、既存事業者を巻き込みやすく、豊富な種類と高品質を実現していると語る。
この一方で、ベントー・ドット・ジェーピーの小林氏は、自社で弁当の工場などは持たないとしながらも、「すぐに届ける」という価値を最大化するために、あえてデリバリースタッフを採用していると説明。ゆくゆくはアルバイトの数を数百人規模まで増やしたいとしている。ただし、当初は「1日に面接を4件入れて、1人しか来なかった」といった、リアルならではの苦い経験もしたという。
それぞれのアプローチで、既存事業のネット化に挑戦している3社だが、もし今後ネット化するとしたら、どのような領域に興味があるのか。葵の石井氏が注目するのは「医療」だ。「知人が精神科医で企業内カウンセリングをしているが、空き時間が多いと聞く。時間を割り振ってSkypeでチャットするなどして効率化できればいい」(石井氏)。
ベントー・ドット・ジェーピーの小林氏は、家族が薬剤師をしていることなどから「薬」を選んだ。「薬がほしいタイミングは(病気で家などから)動きたくないことが多い。そこにはニーズがありそうなので、僕らが運びたい」(小林氏)。
最後にラクスルの松本氏が挙げたのが、主力事業ともシナジーのある「折込チラシ」や「ポスティングチラシ」「ダイレクトメール」などだ。松本氏はこれらを合計すると1兆5000億円規模の市場があると説明。「今後なくなっていくと言われる業界では、誰もIT化を進めない。そこに逆にチャンスがある」と語り、印刷した後の“届ける”領域でITを活用できるのではないかとした。
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