世界では先を行っている自負がある--海外で躍進する乙女ゲームベンチャー「KOYONPLETE」

佐藤和也 (編集部)2014年07月18日 10時38分
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 女性をターゲットとした恋愛ゲームやビジュアルノベル、俗に“乙女ゲーム”と呼ばれるジャンルにおいて、海外で躍進するベンチャー企業がある。2011年に設立した「KOYONPLETE」だ。

 2011年12月に、同社の最初のタイトル「Purelove」を中国向けにリリース。その次の2012年10月にリリースした「恋学園」も英語版と中国版を配信するなど、初めから海外向けにリリースしていることが特徴。2014年6月時点では37タイトルを8カ国語で配信。累計ダウンロード数は600万を超えている。中国のSNS「Weibo」でも同社のファンが多数集まり、Facebookでも累計で32万いいね!を獲得している。日本ではあまりなじみのないパブリッシャーだが、2014年6月にリリースした「へい!恋愛一丁」は、すしを擬人化するという独特の設定からTwitterで12万リツイートされるほど、日本でも話題となったタイトルだ。

  • 「へい!恋愛一丁」

 「自分のライフプランのなかに、起業するということは考えてなかった」と語るのは、代表取締役の杉本明子さん。杉本さんは中国と米国の大学を経て日本のオンラインゲーム会社で勤務。主に中国や米国での運営や渉外業務を担当していた。「もともとやりたいこととして、世界中の人が国境を越えてつながり、何かひとつのことを楽しめたり、なし得るようなことができればと考えていました」(杉本さん)。

 在職中に東日本大震災が発生した際、自分を見つめ直すなかで自ら発信することに挑戦したい気持ちに傾いていったという。オンラインゲームの会社でも数人規模から上場までの過程を目の当たりにしたという経験も、少なからず影響したと振り返る。

 ほどなくして退職をし、プログラミングを学ぶために専門学校に入学。「初めは自分でプログラミングしてアプリを発信したいと思っていたんです。ただ、プログラミングよりも企画のほうが楽しく感じて。それで企画として何かを立ち上げる方向に流れていったんです」(杉本さん)。そして知り合った専門学校の仲間を中心に、4人で創業することになった。

中国展開は「アプリであれば、むしろ楽」

 KOYONPLETEで特徴的なのは、初めから海外で展開しているところだ。中国や米国での留学経験で、日本の漫画やアニメが現地で愛好されていることは肌で感じていたという。「中国でも20代前後の若者は、日本人よりも詳しいと思えるぐらいの人たちがかなりいます」(杉本さん)。展開するジャンルも、周囲のアドバイスからある程度ターゲット絞るため、女性向け乙女ゲームを中心に据えて展開することを考えたという。もっとも、海外でも成り立つかは未知数だったと振り返る。

 「創業するタイミングでアジア圏の留学生にヒアリングしたり、実際にスマートフォンの乙女ゲームを遊んでもらったのですけれど、彼女たちは全く知らなくて反応も乏しかったです。でもオープンな場で乙女ゲームを絶賛するような反応は日本人でもしにくいですし、内向的に妄想を働かせて楽しむものですから。知られていないのなら試す価値はあると思いました」(杉本さん)。海外にはまだこのジャンルでそれほど大きなプレイヤーが少なく、かつ潜在的な需要があったこと乙女ゲームでの展開を決めた。

 特に杉本さんは初めから中国展開を念頭に置いていた。ゲームをはじめとしたデジタルコンテンツなどは、中国向けのビジネス展開が難しいとされているが、杉本さんは過去の経験から、アプリであればむしろ楽だととらえていたという。

「起業するときにまわりからは『中国では痛い目を見る』、起業経験者や年配の方には本当にやめたほうがいいと言われました。実際、PCオンラインゲームのライセンスをするだけでも政府の施策に従ったプログラムの改良と審査が頻繁にあり、リリースするまで半年から1年かかるといったことも普通にありました。でも、iPhoneというプラットフォームはさまざまな障害を取り除きます。介入がないと考えただけで胸が躍るぐらいでした」(杉本さん)

 なお、Android向けのアプリについては、中国でGoogle playがない代わりに独自マーケットが複数存在し、そこにカスタマイズして展開しているという。国別のダウンロード数でいけば中国が最も多く、一方で欧米圏のほうが課金率がいいとしている。マネタイズについては主にアプリ内課金とリワード広告が中心。ゲーム自体は無料にし、1日で遊べる時間を制限。コインを購入して制限を解除する。アプリ内課金があまり浸透していない地域では広告をクリックしたユーザーにコインを還元する形で、長く遊んでもらえるようにしている。

 ちなみに国別で好まれる世界観についても聞いてみた。「韓国では韓流ドラマに象徴されるような、表現としては定番なものが好まれているようですし、恋愛ものに関しても感度が高いです。中国では、日本の学生生活では当たり前のような文化祭や修学旅行、部活に憧れがあるようですね。米国では、バンパイアやゾンビであっても恋愛対象として受け入れられているようです」(杉本さん)

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