海外展開において、また開発におけるコスト低減でも強みとなっているのが翻訳。杉本氏自身の人脈などから、海外にいる乙女ゲームのファンを中心にした独自のグループが存在。とかく日本語特有のニュアンスや独特な表現を、ファンならではの解釈で的確に翻訳されているのも、同社のタイトルが各国で支持されている要因のひとつとなっている。
クリエイターについては、能力が高くてもまだ知られていないイラストレーターや声優を起用。専門学校と連携し、在学中や卒業生に声をかけたりネットでも募集し、面接を経てゲーム制作に参加しているという。これはコスト面の事情もあるが、「日本では競争過多ですが、イラストレーターもシナリオライターも声優も日に当たらないだけで、世界基準でも見れば素晴らしい実力の持ち主が多く、世界に発信していけるだけの力があります。心が折れないうちに世界でやっていけることを見せてあげて、モチベーションを保って夢を叶えてもらえたらいいなと思ってます」(杉本さん)
実際に専門学校に行くか迷っているさなかで声をかけた、イラスト投稿サイトで見つけたある学生について後押しをしたところ、進学した先でトップクラスの成績を収めたこともあるほか、声優でも動画サイトの配信では海外からの視聴者コメントが付くといったこともあったという。参加したクリエイターのクレジットについては、この先の仕事に繋がるようにと、大きく出すことにしていると語った。
こういったさまざまな強みを生かして展開した結果、同社は初年度からすでに黒字を達成。今後もさらに事業拡大を目指す。この先の1年では、月に2本程度のペースでタイトルをリリースしていくほか、新たなゲームエンジンを用い、携帯ゲーム機のPSPで展開されアプリ化されていないタイトルを移植し、パブリッシャーとして世界に配信することも今秋あたりから展開したいとしている。これまで強みとしていた開発コストの安さについても増大が見込まれるが、そのための資金調達や人材の採用も積極的に進めていく方針だ。
杉本さんは、世界的に見ればまだまだ潜在的なユーザー層があり、乙女ゲームを知ってもらうことによって、さらにマーケットが広がるとの見方をしている。56万PVを超えたKOYONPLETEの動画サイトでは、最近になって杉本さん自ら実況プレイを行う動画も公開。可能であれば海外で展開している日本のアニメやゲームのイベントに出展するなど、さまざまな形でアピールを行い、乙女ゲームを通じて日本の良さ、クリエイターの技術の高さを知ってもらいたいと考えているという。
「乙女ゲームのメーカーとしては後発ですけれども、世界では先を行っている自負はあります。今後3年ぐらいで、3000万人のユーザーを獲得できるぐらいの事業になれば」(杉本さん)
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