「骨太」な起業家が集うインドネシア--CAVが明かす投資のリアル

 サイバーエージェント傘下で投資育成事業を行うサイバーエージェント・ベンチャーズ(CAV)は、急速な経済成長を遂げるアジアでその事業領域を拡大中だ。中国、台湾、韓国、ベトナム、インドネシア、そして4月にはタイにも事務所を開設し、世界8か国11拠点で事業を展開している。

 そうした同社のアジアにおける拠点国の一つであるインドネシアは、日系を含む海外のベンチャーキャピタル(VC)が現地法人の設立や地場企業への出資などさまざまな形態で活発に参入している。先日はソフトバンクが同国で投資ファンドを組成したという報道もあった。

 VCを惹きつけるこの国のスタートアップ市場の現状、CAVの事業展開について、インドネシア ジャカルタオフィス代表の鈴木隆宏氏に聞いた。


サイバーエージェント・ベンチャーズ ジャカルタオフィス代表の鈴木隆宏氏

5社に出資 イグジット有望株は「Tokopedia」

――CAVのインドネシア進出の経緯を教えて下さい。

  • 「Tokopedia」

 ジャカルタオフィスを開設したのは2011年10月。しかし、進出の可能性自体は2010年頃から探り始めており、2011年4月には国内最大のオンラインショッピングモール「Tokopedia」を運営するPT Tokopediaに70万ドルを出資しました。オフィス開設を決めたのは、当時のインドネシアが、弊社が2009年にベトナムに拠点を開設したときの同国と同等の経済、そして人口規模を形成し、スタートアップ市場が活発化し始めた状況だったからです。

――インドネシアでの投資方針は。

 事業が軌道に乗り始めたアーリーステージにあるベンチャー企業や、まだ事業は立ち上がっていないものの経営者がそのアイデアを持っているようなシードステージにある企業への出資に注力しています。出資先企業の分野はIT全般ですが、先進国で成功を収めている事業をこの国でも展開する「タイムマシン」的出資を方針として掲げています。米国や日本、中国などのネットサービスの流行を時系列で遡って、この国でも成功する可能性のある企業を選んでいます。

――今のインドネシアを先進国の時系列で表すと。

 インターネット普及率などから鑑みると、2001~2002年の日本、2005~2006年の中国でしょうか。しかし、スマートフォンが急速に普及しネットユーザーが急増しているため、この国が日本や中国がこれまで辿ってきたペースで成長していくとは考えていません。

――オフィス開設からこれまで行ってきた取り組みを教えて下さい。

 進出してきたばかりのころは、毎週のように開催されていたスタートアップイベントに参加し、ひたすら名刺を配り歩くようなことをしていました。また、企業のウェブサイトのSEO順位を公開している「Alexa」を使ってトラフィックが多い企業を洗い出し、上から順にコンタクトを取るようなことも。しかし当時は「サイバーエージェント」という名前が知られていない状況だったため、アポを取るのでさえ苦労しました。

――そんな状況が好転したのは。

  • CyberAgent Net Impactの様子

 オフィス開設から半年が経った頃です。インドネシアには過去に成功を収めた起業家が少ないため、これから成功したいと考える起業家が先人から学ぶ機会というものが非常に限定されていることに気がつきました。そこで2012年3月に「CyberAgent Net Impact」というスタートアップ企業向けのカンファレンスを開催しました。この国では珍しく無料で参加でき、中国の大手IT企業テンセントのダイレクターや各国の有名VCの話を聞けるということで約500名の起業家を集めることができました。

 また、ちょうどその頃からTokopediaに出資しハンズオンで積極的に経営に参加していることが経営者間のクチコミによって認知され始め、ベンチャー企業から問い合わせがくるようになりました。

――これまで出資した企業を挙げて下さい。

 先ほどのTokopediaを含め5社。国内最大のベビー用品サイト「Bilna.com」を運営するPT Bilna、ファッションに特化した会員制セールスサイト「VipPlaza.com」を運営するPT. VIP Plaza、スマートフォン向けのゲームを開発するTouchten Games Pte. Ltd.、インターネット上の小額決済を携帯キャリア決済で行えるプラットフォームを提供するCoda Payments PTE. LTD.です。

  • 「VIP Plaza」

 この国はスマホ課金モデルがいまだ伸長していないため、たとえばTouchten Gamesはゲームでポイントを稼いだユーザーに企業からのクーポンを贈呈する、日本にはないユニークなビジネスモデルによって運営されています。VIP Plazaは、楽天のインドネシア事業の立ち上げにおいて活躍されていたキムテソンさんが経営するということでシードステージにありましたが出資しました。

――企業に出資するか否かの判断基準は。

 第1に、狙うマーケットの規模が大きいか。第2に、経営チームがそのマーケットに対して最適化されているか。第3に戦略です。その上で中長期の事業計画では企業として必達しなければいけない目標やポイントを定め、次にそれを達成するための1年ほど先までの短中期の戦略を考え得るリスクを踏まえた上で詰め、PDCAサイクルを回します。

――目指すイグジットの形は。

 上場です。しかし実際、インドネシアで上場しているIT企業は存在しないため、直近ではこの国に進出したいと考えている中国や韓国を始めとする他国の企業からによるM&A、プライベートエクイティファンドとのトレード成立も視野に入れています。イグジットの規模感としては、数億円程度と言わず、この国を代表するような、もしくはグローバル企業がこの国に進出する際に無視できないような存在感というものを目指しています。

――既存の出資先で実現の可能性が最も高い企業はどこでしょう。

 向こう3~4年間で見ればTokopediaです。弊社が出資してからすでに億単位の資金調達を2度行い、順調に企業としてのステージが上がっていっています。

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