MVNOの通信サービスは、データ通信に関しては既存キャリアより安価に利用できるケースが多く、また選択肢も豊富に用意されている。キャリア各社の新料金プランで話題となった、音声通話定額の仕組みは存在しないが、逆に音声通話をあまりしないユーザーにとっては、料金の安さと選択肢の豊富さがメリットとなるだろう。それだけに今後、データ通信のヘビーユーザーや、通話も通信もあまりしない、待ち受け主体のユーザーなどが、ある程度MVNOへ移行するものと考えられる。
ただしMVNOのサービスは、インフラ整備にかけるコストを省略するだけでなく、流通やサポート、“キャリア課金”など付加サービスの提供にかけるコストを削って低価格を実現しているため、キャリアのサービスと必ずしも同等ではなく、不便になる部分も少なからずあるようだ。コスト面の工夫だけでなく、“安かろう悪かろう”にならないためのサービス面での充実も、今後は積極的に求められるところだ。
さらに今後を見据える上で、MVNO事業者に大きな影響を与える動きがいま起きている。それはSIMロック解除の義務化だ。6月30日に総務省のICTサービス安心・安全研究会が実施した「消費者保護ルールの見直し・充実に関するWG」において、2015年よりSIMロック解除を義務化する方針が打ち出されたのである。
総務省は2010年にも「SIMロック解除に関するガイドライン」を定めたが、ドコモが有料での解除に応じたのみ。au、ソフトバンクモバイルはSIMロック解除への取り組みに消極的であった。一方でウィルコムやイー・アクセスがソフトバンクの傘下に入るなど大手キャリアの寡占化が進んだことから、総務省はさらなる競争促進のため、SIMロック解除の義務化という方針を打ち出したようだ。
この方針が、MVNOに大きなメリットをもたらすとして期待する向きも多い。というのも、これまでキャリア各社は、“2年”など一定期間の契約を前提として端末価格を割引き、月々の通信料でその代金を回収していた。しかし、SIMロック解除が義務化されると短期間で他キャリアへ乗り換えられてしまうリスクが高まるため、キャリアは端末の割引額を下げざるを得なくなる。そうすると端末購入時の価格が大幅に上昇することから、ユーザーがより価格を重視してMVNOへと流れる可能性はある。
無論、SIMロック解除義務化の方針が示されたといっても、実際どのような形でSIMロックが解除されるのか現時点では不明であり、MVNOにどの程度影響を与えるのかは、未知数な部分も多い。だが格安スマホの人気、そしてSIMロック解除義務化に向けた動きの加速によって、従来ニッチな領域を埋める存在であったMVNOのビジネスが、大きく変化する可能性が高まっていることは確かだろう。
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