スマートフォンの進化を考えると、別の視点も出てくる。
PCやタブレットなどに触れず、スマートフォンをはじめから使っている世代にとって、メインのコンピュータはスマートフォンであり、全てをスマートフォンでこなしている。
LINEやメールなどのコミュニケーションや、カメラはもちろんのこと、ちょっとしたメモやドキュメントはEvernoteで済ませるし、(ケータイの時代からそういう学生はいたが)ちょっとしたレポートを短時間で書き上げることも苦ではない。また写真やビデオ編集も撮ってそのままデータの移行なしに編集できるスマートフォンは十分便利だ。
特に若い世代にとって考えてみると、タブレットやモバイルノートなしに、十分生活を送れてしまうまでに、スマートフォンとそのアプリ、そしてこれらを使いこなすライフスタイルが成熟している。つまり、PCを外出先で使う必要がなく、MacBook Airが必要ないというスマホネイティブな層が生まれてきたと見ている。
今回の新しく、最も安いiMacは、こうしたスマホネイティブ世代にぴったりなマシンと言える。
彼らにとっては、外出先のデバイスはスマートフォン1つで良いため、PCを使うとしたら自宅で十分だ。ひとり暮らしの場合、テレビや光回線を引かず、全てをスマートフォンだけ、もしくはWiMAX回線とPCだけで済ませようとする人たちもいる。
画面が小さなノートPCと比較して、テレビと同じ解像度で十分に大きい21.5インチのiMacは、スマートフォンの画面とは全く違う、ネットにつながったディスプレイとしての魅力を放ち始めている。YouTubeやニコニコ動画などを楽しむには十分のサイズとパフォーマンスであり、安い薄型テレビとApple TVの組み合わせには負けるが、PCが手に入るとなれば、価格も十分に納得できる。
2014年秋にリリースされるiOS 8とOS X Yosemiteの組み合わせは、こうした魅力をさらに発揮するようになるだろう。
iPhoneは画面の大型化がささやかれている。将来iPhoneが4.5インチクラスや5.5インチクラスといった、現在のAndroidスマートフォンの主流となっているサイズまで拡大してくると、タブレットと競合してくる。スマートフォンだけで生活する人たちにとって、より安心して、iPhoneだけを選ぶことができるようになるのではないか。
いくら5.5インチまでスマートフォンの画面が拡大しても、21.5インチのiMacのディスプレイは全く違う大きさだ。iOS 8のiPhoneとOS X YosemiteのMacは、通話機能やSMS、作業の引継ぎなどでスマートに連携してくれるようになり、外ではiPhoneで全てを済ませ、家に帰ってきたら同じ作業をiMacで行う、というスタイルがより自然になる。
例えばEvernoteやDropboxといったiPhoneにもMacにも対応するクラウドサービスでは既に作業の引継ぎをクラウドへの同期という形で実現している。iPhoneで書いた走り書きのメモをMacでしっかりと文書化するという流れは、時間を無駄にしないばかりか、思いついたアイデアを忘れずに済む筆者にとって最良の方法になった。
今回試したエントリーモデルのiMacは、決してハイエンドのパフォーマンスを求める種類のマシンではない。しかしスマートフォンが中心で、その生活をより快適にする位置づけのMacであり、新しいコンピューティングのスタイルを象徴する性能と価格を提案していると感じるのである。
帰りの電車で4インチの画面で映画を楽しみ、家に帰ってきたらそのまま21.5インチのiMacの大画面で続きを見る──という体験を想像してほしい。確かに60インチのテレビとは違うかもしれない。それでも、スマートフォンの画面がiMacの画面になった瞬間、自由さや快適さを感じることだろう。
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