政府の有識者会議「パーソナルデータに関する検討会」は6月19日、個人に結び付かないよう匿名化したパーソナルデータについて本人の同意なしに提供できるとする指針を含む新制度の大綱案をまとめた。
ここでいうパーソナルデータとは、情報通信技術の飛躍的進展にともない収集や分析が可能になったビッグデータの中において、とりわけ利用価値が高いとされる個人の行動・状態などに関する情報のこと。現行法では自由な利活用が制限されるグレーゾーンが拡大しており、保護すべき情報の範囲や事業者側のルールもあいまい。そこで現状に適した利活用の線引きを行おう、というのが検討会の狙いだった。
ビッグデータ、パーソナルデータの活用に関する騒動といえば、2013年夏に発生した「JR東日本のSuicaデータ転売」が記憶に新しい。ユーザーのSuica利用にともない集積された移動・導線データを他社に販売したが、それを知ったユーザーの多くがJR東日本に反発、希望者についてはデータリストから削除するという対応がとられた騒動だ。
この一件を見ると、検討会がまとめた「本人の同意なしに提供可能」とする指針はかなり危険な印象を受ける。JR東日本が他社に渡そうとしたのは「個人を特定できる情報は全く含まれていなかった」にも関わらず、実際には強い反発が発生しているためだ。仮に検討会大綱案がそのまま法制化につながったとして、同じような騒動が起きないと言い切れるのだろうか。利活用する企業側も騒動を警戒し、法制度そのものが形骸化してしまう恐れもある。
ビッグデータ、パーソナルデータを事業者が活用することで我々が得られるメリットとは何か。そして、そのデータ活用時代を迎えるにあたり理解しておくべきこと、越えるべき壁とは何か。改めて考えてみることにした。
「ビッグデータ、パーソナルデータ利活用を考える上で、情報を提供する側となる一般ユーザーが最初に理解しておくべきこと。それは、利活用する側は“あなた個人には何の興味もない”ということです」。クラウドプラットフォーム「Microsoft Azure」を担当し、これまでビッグデータの集積・解析においても数多く携わってきた日本マイクロソフト サーバープラットフォームビジネス本部クラウドアプリケーションビジネス部部長の斎藤泰行氏はそう言いきった。
柔らかく言いかえると「ビッグデータ、パーソナルデータ分析は個人を特定しなくとも十分有益な情報を得ることができる」ということ。つまり、個人の名前や性別、住所、顔、職業、身長、体重といった情報を排除した上で、購買履歴や行動データなどから特定の属性にわけるのがビッグデータ、パーソナルデータの活用なのだ。
とはいえ、先のSuicaの例が示すとおり、自身の行動データを収集され、余所に販売されるとなれば一抹の気持ち悪さを覚えるのは人間の本能とでも言うべきもの。個人的には「データ販売をやめてほしい」とJR東日本に訴え出るまでの行動は起こしていないが、心にもやもやしたものを感じたのは事実である。
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