「JR東日本の件に関していえば、“データを他社に販売する”という行動において、一般ユーザー側に適切なベネフィットを示すことができなかったことが反発の要因と考えられる」と斎藤氏は語る。
Suica導入によってユーザーが受けたメリットはあるが、切符販売や改札作業の効率化でJR東日本側が得たメリットでほぼ相殺。むしろ、後者のメリットのほうが大きいかもしれない。その上、得たデータを他者に販売して儲けを得ようなどというのは言語道断、と考えた一般ユーザー多かったのではないかという指摘だ。
斎藤氏の騒動分析を全面的に支持するのは難しいが、ひとつ、重要な内容が含まれている。「適切なベネフィット」、つまりデータ提供者側が受ける明確なメリットがあれば、多くのケースにおいて納得・理解が得られるのではないかということだ。
わかりやすいケースなら「協力してくれた方には○○をプレゼント」、それ以外でも明確な生活利便性向上、または効率化実現にともなう利用価格低下などが考えられる。これらのベネフィットに納得したユーザーは協力し、納得できない場合は非参加・拒否すればいい。
こうして考えると、やはり「個人の同意なし」を明文化するのは危険な香りが漂う。斎藤氏が最初に理解すべきこととして指摘した「あなた自身に興味はない」を全国民が理解するのは現段階では難しいと考えられるためだ。
一方、斎藤氏はこうも話す。「ビッグデータ、パーソナルデータの活用を総論として捉えるのは困難。さまざまなケースに応じて、このケースはどこに気持ち悪さを覚えるのか、どうすれば納得・理解が得られるのかを素因数分解する必要がある」。
データ開示の拒否を申請した方についてはリストから削除する、というJR東日本の対応もまた、多くのケースの中のひとつにすぎない。そこで、次回はさまざまなケースにおける各論を考えてみたいと思う。
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