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新経済サミット2014

特殊な事情を抱える日本の市場に疑問が噴出--ネットラジオのTuneInなど4人のCEOが語るコンテンツビジネス - (page 4)

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いずれは洪水がやってくる、船がなければ逃げ遅れる

 来場者からの質問も飛んだ。東京オリンピックを2020年に控え、その頃までにソーシャルライフがどう変わっていると思うか、という問いに対して、KKBOXのChris Lin氏は「それが予測できればここに座ってないで株取引をやっているだろうが」とジョークを交えながらも、2020年には地域に関わらず音楽のライセンスについての障壁がなくなっていることを期待するとし、「今よりはるかに楽しめる新しいアプリケーションや利用形態が出現するだろう」と話した。

 TuneInのJohn Donham氏は、メディアの歴史を振り返る形で説明した。インターネットラジオはクリエイターとユーザーの双方向でコミュニケーションできるメディアだが、「数十年前に発明されたトランジスタラジオは一方通行のデバイスで、コンテンツは消費するだけ。投稿することはできなかった」。

 紙の新聞についても同じように一方通行だったが、オンライン化したことによって、コメント機能で読者とコミュニケーションを取れるようにもなった。これが発展していけばいずれクリエイターとユーザーの境界は区別しにくくなり、ラジオに限らずどんなメディアも「ユーザーとのよりハイレベルなエンゲージメントを実現するのでは」と予測した。

 さらに来場者からは「コンテンツ事業が縮小し、文化を拡大するための技術革新を怠っている日本へのアドバイス」を求められ、VikiのRazmig Hovaghimian氏は「データが力になる」と答えた。Vikiではどの国のコンテンツがどの国で人気があるのか、どの言語で見られているのかといったデータが全てあり、たとえ本国の放送で視聴率が低かったものでも、Vikiでは人気の高いコンテンツとなっているものもあることがわかっている。言語の障壁を乗り越え、データやコンテンツから学ぶべきだとした。

 すでに1年以上日本企業と協業しているKKBOXのChris Lin氏は、その経験から日本の音楽業界について、新しい音楽配信のビジネスモデルによるカニバリゼーションや収益の低下を、日本の企業は恐れているのだろうと話す。「我々(のようなビジネスモデル)が存在しなかったとして、収益が戻るかというと、そうではないと思う」としながらも、まだ切羽詰まった状況にないことも日本の企業が動かない理由の1つかもしれないと語る。

 「日本におけるCDの売上は、他国ほど急速に冷え込んでいるわけではない。しかし、いずれは洪水がやってくるわけで、船がなければ逃げ遅れる。時間が全てを変える。考え方の問題だ」と警鐘を鳴らした。

 これを引き継ぐ形でRazmig Hovaghimian氏は「カニバリゼーションではなく、一歩下がって二歩進むためのものだと考えるのはどうか」と提言。「確かに少し後退するかもしれないが、これはバネみたいなもの。ジャンプするためにはいったん縮む必要がある」と、比喩を交えてアドバイスした。

別の地域でも聞けることがプレミアムなコンテンツではない

 その後、コンテンツをどう差別化するのか、また、広告配信や有料コンテンツなど、マネタイズにおいて工夫する方法にはどんなものがあるか、といった質問も会場から投げかけられた。

 差別化についてNatavudh P. Moo氏は、OOKBEEがタイのローカルコンテンツに絞って配信していることから、Kindleなどの競合は存在せず、差別化を意識することもないとした。ただし、電子書籍コンテンツを一般の社会人が利用するのは、仕事が終わった後、寝るまでの4~5時間ほどしかないため、ゲームやソーシャルサービスに対してOOKBEEをどう魅力的にパッケージングし、引き込むか、という点に集中していると話した。

 Vikiでは、他国のコンテンツを自国の言語で気軽に見られるという他にはないエクスペリエンスを得られる。YouTubeのように膨大な数のコンテンツをできるだけ集めるというアプローチは取っておらず、一部のコンテンツプロバイダーは、ごく少ない本数ながらも品質の高い番組を提供しており、キュレーターを大々的に活用してうまく情報を拡散し、再生数を伸ばしている例もある。このことからRazmig Hovaghimian氏は、そういったエクスペリエンスの提供とキュレーションが差別化には重要だと説いた。

 マネタイズに関してTuneInでは、すでに触れたようにユーザーの端末の言語設定などをチェックして配信する広告の中身を変えるようにしている。有料コンテンツについてJohn Donham氏は、特に日本のラジオ配信の大きな課題となっている“地理的な障壁”をまず早急になくすべきだと再度強調し、「(ワールドワイドで)プレミアムコンテンツに課金してくれる顧客を見つけるべき。別の地域へ移動しても聞けるようにすることがプレミアムなコンテンツではない」と主張した。

 KKBOXは月額課金モデルで運営しているものの、毎日たくさんの曲を楽しんでいる人もいれば、月に1回程度しかアクセスしない人もおり、Chris Lin氏は、ユーザーの利用頻度に応じた妥当な金額設定というものを検討する必要性について触れた。「われわれはユーザーを一層尊重するべきだと考えている。そぐわない金額をユーザーに払わせるようなことのないようにしたい」と語った。

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