各業界のイノベーターらが集い、最新のビジネス情報を披露するカンファレンス「新経済サミット2014」が、4月9日から2日間の日程で開催された。4月10日の午後のセッションでは、3社のベンチャーキャピタリストらが投資家としての視点から、それぞれの投資基準、日本の起業家やベンチャーキャピタリストに期待することなどについて語り合った。
モデレーターはライフネット生命保険 代表取締役社長兼COOの岩瀬 大輔氏が務めた。冒頭では3者が自己紹介し、ベンチャーキャピタリストになった経緯を話した。
SV AngelのDavid Lee(デビッド・リー)氏は、2009年に同社を立ち上げた創業メンバーの1人。Twitter、Pinterest、Square、Dropboxなど、今や誰もが知るそうそうたるインターネットサービスへ投資をしてきた。一般ユーザー向けのモバイルインターネットサービスに特化した形で支援しているが、現在はインターネットにおいてモバイルだけでなく多様な分野が広がりつつあり、「テクノロジを持つ起業家にとってこれほどエキサイティングな時代はない」と述べ、「今後10年間でこれまでの過去20年に起こったことよりもさらに大きな変革があるものと信じてやまない」とも語った。
Lee氏の父は起業家であり、1980年代にフォーチュンクッキー(中におみくじが封入されたクッキー)を作る機械を初めて開発した人物。同氏はそれを見て、自身にそのような能力はないものの、それまで手で作られていたクッキーを技術で助けるような人を支援できるのではないかと考え、ベンチャーキャピタリストになったのだという。
次にインフィニティ・ベンチャーズLLPの田中 章雄氏が自己紹介した。同氏はマクロメディアの日本法人と米国本社を経て、合併によりアドビへ移籍。同社で働いていた当時、突如訪れた米国本社のCEOにショッピングツアーへ誘われ、わけもわからず海外へ連れて行かれた。実はそれが単なる買い物ではなく企業の買収だったという出来事が、同氏が投資事業に関わるきっかけになった。
「新しいイノベーションは必ずアジアから生まれる」という当時のCEOの考えのもと、同氏はアジアを中心とするベンチャー企業の投資事業を担当することになり、その後独立した。アドビにいた2004年に初めて中国を訪れた際には、中国のインターネット業界は遅れていると思い込んでいたが、実際のところは、たしかに荒削りではあるが、サービス開始からわずか2年間で1000万ユーザーに達するなど、企業が抱えるユーザー数がとても大きかったと述懐する。
中国には日本のように進んだモバイルテクノロジはないものの、インターネット分野における進化のスピードがものすごく速かった。これがフロンティアなのだと思い、こうした最先端の領域へ進出した方がさらに面白くなると感じたのだという。
ここで同氏は、インターネット分野の世界におけるスタートアップ企業の数と規模を表す地図を示し、「シリコンバレーはいまだテックワールドの中心だが、世界中にはたくさんのホットスポットがある。イギリスやドイツも非常に多く、ブラジルは小さいが急成長している」と状況を解説した。
同社は北京に最大級のコワーキングスペースを開設するなど、スタートアップへの投資だけでなくビジネス環境の周辺整備も行っている。中国ではテクノロジ関連だけで少なくとも5000人を超える起業家、700人以上の投資家が存在するとしており、「日本においても同様の規模感で活動していけるものと思っている」とした。
3人目の500 StartupsのGeorge Kellerman(ジョージ・ケラマン)氏は、威勢良く日本語でスピーチした。同社は2010年の創業以降4年間で700社に投資しており、うち日本のスタートアップにも10社ほど投資している実績がある。もともと同氏はスタートアップに対するコンサルティングをしていたが、より深く関わっていくために資金の必要性を実感。ファンドを立ち上げようとしていた矢先に同社の創業者であるDave McClure(デーブ・マクルーア)氏と出会い、500 Startupsにジョインしたという経歴をもつ。
最近米国で報道された、自宅の庭で10億円相当の金貨を掘り当てたという話題を引き合いに出し、これを日本の経済になぞらえてみせた。日本の大手企業はおよそ150兆円の現金を保有しているにもかかわらず眠らせたままにしていると指摘し、「現金を投資するほど経済が回るので掘り出して使ったほうがいい」と提言。日本の大企業に対し、2014年度中に150兆円のわずか0.1%に当たる1500億円を使って、スタートアップの買収、コーポレートファンドの設立、VCファンドへの投資のうち「どれかやれ」と迫った。
また、「日本の企業は現金より大事なものも埋めている。それは女性の力」だと主張。経済成長を望むのあれば今こそ、経営者、起業家、投資家にもなりうる女性の力が必要であるとし、男性と同等に働ける社会作りをすることが今の一番のチャレンジだと語った。
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