新経済サミット2014

イノベーションはレボリューション--キーパーソンが見た新経済サミット2014

 4月9~10日に開催された、新経済連盟主催の「New Economy Summit 2014」。1日目のセッションの締めくくりは、ボストン コンサルティング グループ 日本代表の御立尚資氏をモデレーターに、5人のパネリストによる「DAY1総括」と題したディスカッションが行われた。

 登壇者は、新経済連盟の代表理事を務める楽天代表取締役会長兼社長の三木谷浩史氏をはじめ、DCM共同創業者兼ジェネラルパートナーの茶尾克仁氏、シスコシステムズ代表執行役員社長の平井康文氏、フューチャーアーキテクト代表取締役会長兼社長の金丸恭文氏、フリービット代表取締役社長CEOの石田宏樹氏の5人。1日目のセッションを振り返り、それぞれが語ったコメントを以下に紹介する。

  • 御立尚資氏

 「私自身の考えは、デジタルレボリューションが始まって、実はまだとば口で、産業革命の時代になぞらえると、今は1820年代ぐらいの時期にあたる。おそらく1人あたりのGDPのあり方もこれから想像もつかないやり方で変わっていくだろうと。まずはムーアの法則で情報をやり取りするコストが下がったけれど、それだけではない。ストレージするコストも。ブロードバンドなので当然情報のやり取りのコストも下がった。本当の意味でリアルとデジタルの意味を分けた時代は終わり、恐れる人がいる中でどうやってデジタルの恩恵を享受することができるのか」

 「日本は失われた20年の間に1人あたりのGDPがずっと止まったまま。経済成長を続けた他の先進国がサービス産業を推進して上げていったが、日本は経済全体の4分の3がサービス産業であるにもかかわらず、そこの生産力、生産性が上がらなかったので1人あたりのGDPが伸びなかった。製造業の競争力が落ちたと言われるが、これを打破できるのがデジタル革命であると思っている。私自身が受け取った今日の意味はそういうところにある」(御立氏)

  • 茶尾克仁氏

 「ベンチャーキャピタルから見ると、IT産業が始まって初めて、米国、日本、中国のトップ3マーケットが同時期にモバイルによってバブっていると言える。そこで今日の話を聞いていてすごく思ったのは、このバブルのロジックはみんなが酔っているだけなのか、それとも本当に新しい革命に皆が気付いてパイオニアたちが今のうちにランドオフしなければいけないと思っているのか。エデュケーションのセッションを見ても、ウェアラブルのセッションを見ても、まだまだこれからという氷山の一角しか見ていないように思う。産業革命に喩えると、1820年ぐらいの時期にあたるというのはすごく感じている」

 「Androidが本格的に出てわずか3年程度で既に世界のナンバーワン。米国で先月初めてモバイル経由のネット接続がパソコンを抜いた。今回はバブルじゃなくて本当に新しい革命が起きるのかなっていうのがひとつの感想。産業革命でも日本は目標が定まれば素晴らしい商品もサービスもができる才能を持っている国。そういう意味ですごく将来が見えてきたので、このエネルギーをいかにその方向に出すべきか。ちゃんとした訴求さえ握れば世界を握れる、まだまだ試合に喩えると早い段階かなという印象が残った」(茶尾氏)

  • 金丸恭文氏

 「会社を若くして作ることは簡単だが、その会社が伸びていくのは大変。でも、実はそんな若い会社にも顧客がつくというのが米国のいいところだと思った。日本だと起業して優れたサービスを提供しても、資本金や実績を訊ねられる。でも、スタートアップなので実績はない。我々の世界だと会社の実績を問うのに、個人としての実績をなかなか評価しない。今日、来日した多くの起業家の方の話を聞いて、まだまだ世の中にはチャンスがあり、自分の中にいろんなアイディアや気づきがあれば、自分たちも何かビジネスを興せることがあるんだというのがあればうれしい。難しいビジネスというのではなく、シンプルなニーズに対して反応して、素早くスピーディーに、投資家の方だとかできる限り周りを巻き込んでやるべき。知識だけを身につけただけに終わらないでぜひアクションにつなげてほしい」(金丸氏)

  • 平井康文氏

 「今後は、社会とか産業そのものがデジタル化していき、その時にインターネットというのが役立つのではないのかなと感じている。そういう意味でひとつのキーワードになると思うのは“コーポレートソーシャルバリュー”。インターネットによってビジネスだとかサービスを作ったときにどれだけ社会的価値を生み出すことができるかということが企業やイノベーションの非常に重要な価値基準になるのではないかと感じた。そして2つ目は今後は“インフォメーション”を“インテリジェンス”に進化させる部分に大きなビジネスチャンスがあるように感じた。3つ目は“ビジネス肉食男子女子”を生んでいけるような社会のプラットフォームの形成が重要だというのが今日の私の学び」(平井氏)

  • 石田宏樹氏

 「ムーアの法則のとおりにいくと、CPUの速度はだいたい10年間で200倍弱まで伸びていく。ゆえに、今ではなくて10年間でCPUの速度が200倍になったときの世界を想定して準備をすれば全然遅くないと思う。今必要なところを今やろうとするとなかなか大変なところがあるが、そういうふうにコンピューターサイエンスの進化というのを見て200倍の世界がどういうことになるのかということを真剣に考えるべき。今から頑張っていけばできることって非常に多くのことがあると思うので、そういったかたちでこういう機会をぜひとも活かしてどんどん新しいチャレンジをしていただけたらと思う」(石田氏)

  • 三木谷浩史氏

 「すべてのデバイスがコネクトされ、クラウド側にいろんなものが蔵置されて、国境がなくなっていくということは、ライフスタイルも変えていくし、ライフサイエンスも変えていくし、すべてのものの定義が変わる。よって私の今日の気づきは、今回のインフォメーションテクノロジーの“イノベーション”は“レボリューション”であるということ。先日、FacebookがWhatsAppを1兆9000億で買収したが、ビジネスモデルはあとから考えると言ってそれが通る米国がすごいなと」

 「バリエーションが適切であると考えるならば、前に進む、打率は10割でなくていいというのが彼ら。打率は10割でなければいけないというのが日本人。僕の感覚では7割ぐらいでいいと思っているが、米国人の感覚だと3割打者でもいい。このあたりの感覚を変えていかないと日本はやはり取り残される。細かいことにばかりこだわり、あれこれ議論するのではなく、前に進む実業家なり起業家を称賛をしていくという極めて重要な文化を必要とする世界的な環境に入ったんだと。単純にスマートフォンとかだけでなく、教育も政治も通貨もすべてが変わるということだなと感じてる」(三木谷氏)

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