国内外のテクノロジ界のイノベーターを集めたカンファレンス「新経済サミット2014」が4月9~10日に開催。4月10日には「Accelerating the innovation~企業におけるイノベーションとは? 起業家、投資家、経営者が直面する障壁とビジネスチャンスはどこにあるのか?」と題したトークセッションが開かれた。
スピーカーとしてLINE代表取締役社長の森川亮氏、AME Cloud Ventures共同創業者のJerry Yang氏、起業家で投資家のMatt Wilsey氏、モデレーターに慶應義塾大学大学院政策・メディア研究特別招聘教授の夏野剛氏が登壇した。
森川氏は「LINE」のこれまでの成長を踏まえながら、企業におけるイノベーションのあり方について言及した。
2011年6月にスタートしたLINEは、ゲームや電子書籍などのコンテンツを含むプラットフォームとして成長し、現在では4億ユーザーを超えるサービスとなっている。イノベーションを起こすのに大企業やベンチャーという違いはなく、変革を起こすメンバーや環境があるかどうかが大切だと森川氏は語る。
イノベーションはお金ではなく“人”が起こすものであり、価値観のダイバーシティが大切だと語り、サービスにおいて第一に考えるべきは、利用者にとって最大限の価値が提供できるかどうかだという。これらを踏まえて、森川氏はLINEがイノベーションを創出するために重視している3つの“カギ”について語る。
1つめは“意思決定”だ。LINEでは、長期計画をなるべく立てないという。「かつてはある程度決まったものを推進すれば良かったが、今の時代は曲がりくねった道を歩む必要がある。だからこそ、変化に柔軟に対応する組織文化を作ることが大切」と森川氏は語る。
2つめは“サッカー型の組織づくり”だ。柔軟な意思決定と組織運営をするためには、トップダウン型ではなく現場のリーダーの意思決定を重視すべきだという。「これまでの日本は野球型、つまり先攻と後攻が決まっているものは得意だったが、これからは開発、企画、デザイン、マーケティングといった部門がコラボレーションを図りながらリアルタイムで意思決定し、事業を作ることが重要」(森川氏)
3つめは“ユーザーフレンドリーなサービスづくり”だ。LINEでは、極力会議の数を減らし、着想したアイデアに対して経営者ではなくユーザーに判断を委ねるという。早くリリースしてユーザーの反応をもとに改良を重ね、それによってユーザーのニーズを顕在化させニーズに合わせたものへとデザインしていく。技術者は自身の技術に傾倒することなく、潜在的なニーズを掘り起こすスピードと意思決定を求めることが重要だと語る。
Jerry Yang氏は、これから起きるイノベーションの可能性について語った。Yahoo!共同創業者であったYang氏は、2012年にAME Cloud Venturesを設立。スタートアップを中心に50社以上に投資している。主にクラウドやビッグデータに関連する企業を支援しており、同社の“AME”は日本の“雨”に由来し、雨がすべての生命の源であるように、正確で実用的なデータが将来の経済における活力になるとYang氏は語る。
「ネットインフラの充実やデジタル化によって、データを活用したユーザー志向型の動きが出ている。LINEを見ても分かるように、俊敏性やスピードをどう実現するか。そのためのツールがますます求められる」と語るYang氏は、2009年以降の現在を「イノベーションと起業家の黄金時代」と語る。
「モバイルとクラウドの重要性が高まっている。個人向けサービスだけでなく、UberやAirbnbなどのロジスティクスにおける新しいカテゴリとも言える分野も誕生している。テクノロジのあり方、生活様式や仕事のあり方など、さまざまな分野でパラダイムシフトが起きている。それらを予測し、仮説検証を立てて投資すること。未来を作る起業家と出会い、サポートすることが投資家の役目だ」(Yang氏)
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