NTTは、遠く離れた場所(約20m)で話す人々の声から、指定した人の声のみをクリアに収音できる新技術「ズームアップマイク」を開発したことを発表した。この技術を活用することで、スポーツ観戦や中継の際に、まるでカメラでズームするかのように、遠く離れた選手の声を自由に選んで聞けるようになるという。
これまで、遠くの音を収音する技術には、ガンマイクやパラボラマイクなどがあったが、音源が5m以上離れた位置にある場合、受音時のエネルギーが小さいことや空間分解能が低いことから、周りの雑音と区別して収音することが難しかった。
今回開発したズームアップマイクは、音を反射させて遠くの音を収音可能にする凹型反射板の前に、約100本のマイクロホンを設置することで、そのマイクロホン間に生じる位相・振幅差を利用し、遠く離れた場所の狙った音だけをクリアに収音できるという。また、約100本のマイクロホンから、すべての音声を録音しておくことで、後から任意の場所の音をズームアップして聞くことも可能としている。
たとえば、この技術と望遠カメラを組み合わせることで、スポーツ選手の映像も音声もズームアップし、より臨場感のあるスポーツ観戦や放送サービスが可能になるとのこと。また、大きな会場の客席からの質疑応答も、手元にマイクなしでクリアに聞けるようになるほか、大人数のテレビ会議でも1人1人の発言がクリアに聞こえるようになるとしている。
同社では、小型で汎用性のあるマイク素子(2~3本)と今回開発した信号処理技術を組み合わせることで、騒音や雑音のある環境下でも、クリアに狙った場所の音声を収音できる小型収音装置(マイク)やソリューションを、NTTグループの事業会社を通じて開発・販売していくとしている。雑音の多い車でのカーナビ操作や、工場内での機械騒音下でのハンズフリー会話などへの活用を期待しているそうだ。
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