そんな筆者がいま乗換を真剣に検討している先は、AT&TでもSprintでもなくT-Mobileだ。T-Mobileは第4位の携帯電話会社であるが、成長の点ではSprintやAT&Tを上回り、Verizonと同等のレベルで加入者を増やしている。他のキャリアがSIMロックをかけたiPhoneを安く販売する一方で、T-Mobileは大幅に高い負担が必要なSIMフリーのiPhoneしか扱わず、しかし2年契約などの期間を設定しない自由さをウリにしている。
同時に料金プランもわかりやすい。月額50ドルで通話とText無料で、1Gバイトまでの4G LTE高速通信が付いてくる。また1Gバイトを超えても、高速通信ができなくなるだけで、データ通信を利用し続けられる。家族2人で1Gバイトずつのプランに入ると、1人目は50ドル、2人目は30ドルで済むため、合計80ドルと大幅に安い。データを3Gバイトずつに増やしても100ドルだ。もちろんVerizonに比べるとカバーエリアが少ないが、もしエリア内であれば非常に魅力的な選択と言える。
さらに、現在T-Mobileでは、2年契約満了前の早期解約にかかる違約金(ETF、Early Termination Fee)を350ドルまで、さらに今使っているデバイスの下取りを300ドルまで保証する乗り換え促進キャンペーンを行っている。T-Mobileで利用し始める際、SIMフリーのデバイスを新たに購入する必要はあるが、例えば649ドルのiPhone 5Sを購入する際、下取り保証分を差し引いて349ドルで購入できる。合わせて、T-Mobileは日本の割賦販売のように、分割払いをすることもでき、初期費用の負担を減らすことも可能だ。
こうした魅力的なキャンペーンで、最も元気な携帯キャリアのイメージが付いているのがT-Mobileだ。Sprintが依然として第3位のキャリアではあるが、存在感は全くなく、また料金面でも一切魅力を感じることができないため、T-Mobileのように通信会社の乗換の対象として筆者が検討することすらなかった。
孫氏がSprintとT-Mobileを統合したい理由は、規模を大きくすることで端末調達を有利にしたり、ビジネスや料金、ネットワークの自由度を高めたりすることだ。これらももちろん重要だが、米国市場で些少は見向きされるキャリアになるというブランド面の改善も、大きなゴールの1つと言えるだろう。
米国内では、携帯電話会社に限らず、ケーブルテレビ会社にも業界再編の動きがある。その背景に少なからずチラついて見えるのがAppleだ。スマートフォン化のトレンドはAppleが一気にたたみかけることで実現し、米国のインターネット接続のモバイル化までも実現している。現在Appleはテレビ関連のビジネスを準備しているといわれており、最大手のComcastやこれと合併しようとしているTime Warner Cableとの交渉も噂される。
日本では、iPhone登場以前からAppleの携帯電話に目をつけていた孫氏率いるソフトバンクが、モバイルインターネットの世界を大きく変え、結果としてソフトバンク躍進のきっかけとなった。放送・通信分野において、Appleがゲームチェンジャーにとっての鍵となっている。
iPhone 4Sはグローバルで1モデルとして売り出されたが、iPhone 5、iPhone 5sはLTE対応から、地域ごとにモデルが用意されている。米国では、AT&T、Verizon、T-Mobile向けが同じモデルで利用されているが、Sprint向けのiPhoneは日本のドコモ、KDDI、ソフトバンクと同じ。通信方式が違うがSprintとソフトバンクが同じモデルを利用している点から、今後端末調達面で、Sprintとソフトバンクが成果を出す可能性はありそうだ。
米国でソフトバンクが今後どのような成功を収めるのか、依然不透明だ。しかしドコモやKDDIが、米国あるいは世界的な通信市場を変革する確立と比べれば、有望であることも認めるべきだろう。
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