厳選されたグルメ商品の定期購入サイト「smart select」を運営するアクティブソナーが、4月9日からファッションブランドにフォーカスした新たなECサービス「RECLO(リクロ)」を開始した。
昨今は「Fril」や「mercari」など、少ない手間で自身の持つ不要アイテムを出品して販売できる、“CtoC”のフリマサービスが台頭してきており、「RECLO」もそれと似たサービスと言えなくもない。ただ、ユーザーとユーザーの間に、同社がいわば出品代行兼保証会社的な立ち位置で介在し、売り手と買い手の双方に安心感を提供する形になっているのが、既存のフリマサービスと異なる点だ。
こういった“CtoBtoC”の仕組みをとったECサービスは米国で人気が高まっており、日本でも今後増えてくると予想される。CtoCのフリマも含め、各社による主導権争いは激しくなると考えられるが、そもそもどのような経緯で「RECLO」をスタートするに至ったのか、そして勝算はあるのか、同社代表取締役の青木氏に話を伺った。
--初めに、「RECLO」をなぜ始めようと思ったのか、教えていただけますか。
アクティブソナーは設立からまだ1年半ほどの会社ですが、もともと僕自身は携帯電話の販売会社やウォーターサーバの販売会社など、BtoCビジネスのスタートアップを何度も経験してきました。そういう中でBtoCを自分でやることの面白みを感じて、アクティブソナーという会社を設立したんですね。
アクティブソナーでは、「smart select」というグルメ商品のECサイトを運営していますが、ファッション系のコマースもやりたいねというのを、出資していただいているベンチャーキャピタルと昨年から話をしていて、それが形になったのが今回の「RECLO」なんです。
--いきなり「RECLO」というサービスを思いついたんでしょうか。
「RECLO」は会員限定のブランドアパレル委託販売、CtoBtoCというものになるんですけども、昨年くらいからフリマアプリがたくさん出てきたりとか、「Origami」のようなキュレーションコマースというものが現れてきたりしました。こういうファッション系の領域はスケール(事業拡大)しやすいと思っていて、初めはCtoCをやろうと考えていたんです。
ただ、そのあたりをいろいろ調べている時に、2013年10月に「Yahoo!ショッピング」が無料化したりと、ECがあまりに戦国時代的過ぎる雰囲気になってきたので、ここでニッチ戦略を取るよりは「CtoCで困ることを探そう」と。スマホでできるCtoCというのはけっこうパイが大きく、可能性もあるので、スマホとコマースで、Cから始まるものを前提に、ファッション系で何かやりたかったのです。
当時、米国では「The RealReal」というブランド品の中古販売サイトが成功していて、他の人が持っている品を買って終わり、ではなく、それが転々としてシェアされていくようなCtoBtoCが、どうやら熱量が高いことがわかってきました。
あと私の妻もそうなんですが、女性のクローゼットの中身には、靴とかカバンとか、使わないけれどずっと保管されているものがあって、そういうのが日本全体で2兆円くらいあると言われています。スマホから発信できるCtoCのコマースとして、そういうブランド品を扱うオンラインのフリマが形になってきたのであれば、CtoBtoCとしても出てくるだろうと。
海外ではそれを「Re:Closet」と呼んでいます。クローゼットをリフレッシュさせて、持っているものが他の人にうまく回って有効活用されていくさまが、セレブの間でも居心地のいいエコサイクルみたいな感覚になっている。僕もそれを日本でやりたいなと思っていました。
--アクティブソナーが売買を仲介するような形になるわけですよね。それをなぜブランド品に絞ろうと考えたんでしょう。
以前からあるフリーマーケットや古本販売も、日本ではCtoCやCtoBtoCとしてけっこう形にはなっているんですけど、ブランド品とか高級アパレルの分野は、いまだに質屋のような買い取り店が押さえています。オンラインのフリマも、そのブランド品に対してアクションを取り始めている段階ではありますが。
ただ、他社のフリマアプリを見ていると、本物のブランド品や高級アパレルと思われるものが売られている一方で、「○○ブランド風のバッグ」と紹介されているものや、新品未使用としているのにありえない低価格になっているものもあるのです。ユーザーのコメントにも「もらいものなので本物かどうかわからない」といった書き込みなどがあります。
CtoCということで商品の真贋は誰も監視していないわけです。それをわかって買っている人と、だまされちゃっている人がいて、「高額のものはCtoCでは問題が起こりうる」というのが僕らの見解。後で誰かが泣いているなというのを感じていて、そこを変えたいのです。
--たしかにそういう状況になっているのは問題がありそうですね。他にも課題はありそうでしょうか。
フリマは、安い金額であっても、商品撮影から発送まで全部ユーザー自身が自分でやるので、手間暇かけて自分で値付けしたものが売れるという達成感から、時間のある学生であれば十分に楽しいサービスです。でも、仕事をしているOLが会社で打ち合わせ中に出品や購入のやりとりができるわけがありません。なので、時間のある人のお小遣い稼ぎとしては最適ですが、社会人が高価な物を売るには不向きということになります。
また、ブランド品の買い取りをしているお店は多くあるんですが、基本的にはお店側が売れ残るリスクなどを判断しながら価格を決めるので、どうしても買い叩く性質があると思います。売り手としては処分するよりはましかな、というレベルになってしまいます。出品者として得することはないわけです。
これに対してオンラインの委託販売は、理論的には出品者は手間がかからずに安心できて、買い取りよりも高く売れることが多いので理想のモデルと言われています。ただし、委託販売が万能かというとそうではありません。買い手に対しては品揃えを担保できるのかが不透明ですし、売り手にとっては売れるまで時間がかかるので、実際にお金になるかどうかわからないなら、安くてもすぐに買い取ってほしいと思えてしまうところもあります。
そこをスマホ向けサービスとして、出品がたくさん集まって簡単に利用できる形になるのであれば、委託販売を使ってもらえるだろうと考えています。ということで、先ほどお話しした「The RealReal」のようなサービスが利用され始めているわけですけど、そこだとちょっとセレブ御用達みたいな雰囲気を作り過ぎていて、「OLの私のためのサービス」のような、そこを広く取りにいきたいというのが今回のRECLOの狙いです。
--RECLOというサービスを実際に企画、検討し始めたのは最近ですか。
2014年の1月半ばですね。昨年の冬くらいまでは「早くスケールするものをやりたいよね」と思っていました。RECLOを考える前は、家にあるクローゼットをもっと快適にしたいという思いがあったので、クラウドクローゼットじゃないですけど、家にあるものは倉庫に預けて管理して、スマートフォンで配送とかできたらいいよねとか、でもすでに他社がやっていますよねとか、ずっとアイデア出しを続けていました。
そこから発想を変えてみようかとなった時に、言い方は悪いかもしれませんが“ダサい”業界の1つに「おじさんたちだけで成立しているよね」というブランド買い取りの業界に気がつきました。この発想自体は4日間くらいで全部作り上げて、その企画書に対して出資していただけるベンチャーキャピタルにも会うことができて……というありがたい流れでしたね。
--具体的なRECLOの仕組み、利用方法を教えていただけますか。
仕組みはシンプルで、売り手となる出品者とRECLOと買い手がいて、売り手はRECLOから送られてきた箱に商品を詰め込んで、送り返すだけ。RECLOではそれを検品して、鑑定士が査定した金額で売っていいかを売り手に確認し、OKであれば撮影から出品までをRECLOがやります。
しっかりした写真で高級感あふれる形で掲載できますし、RECLOでは売上の最大7割を売り手にバックするので、売り手はフリマのような面倒な作業を一切せずに、物を発送するだけで、売れれば収入になるという理想の形になるわけです。
コアターゲットは25歳の丸の内OLから40、50代のネットを使っている人です。オシャレは大好きだけれど全部新品では買えない、でもほしい、といったユーザーを広く狙っていきます。
法人名義の売り手は今は想定しておらず、その場合は将来的に個別のBtoBのアライアンスとして協業することになると思っています。
--売上の還元率はどのようになっていますか。
売上について細かく説明すると、商品の売上が1万5000円未満なら50%還元、1万5000~10万円未満は65%還元、10万円以上は70%還元としています。
これでコストシミュレーションしていくと、他社のフリマはだいたい10%の手数料となっていますが、我々は商品撮影から査定、フルフィルメントまで、コストを全部当て込んでも、1件当たりの利益率はだいたい17~18%で、けっこう利幅があります。僕らとしては、あとはこれをいかに効率化していけるかですね。
--鑑定を自社で独自に行うというのは難しいところもありそうですが。
もちろんブランド品の査定で一番大事なのは真贋判定、つまり目利きが重要になります。その道30年の銀座の店長とか、20代後半の若手をブランド業界から2名採用しました。それに加えて第3者鑑定機関としてサリナス研究所にもご協力いただいています。
--売り手から預かった商品を管理するためには倉庫も必要になりますね。
倉庫を借りました。そのフルフィルメントの面倒なところもやって、写真撮影スタジオも用意しました。なので、何分で写真を撮って何分で梱包できるのか、ECはその部分の効率化に尽きます。
--売上が大きくなるにつれてそういった作業もどんどん増えていきそうですが。
そういう面倒なところを全部引き受けることが、我々としては参入障壁だと考えています。他社も競合サービスを出してくると思うんですが、フルフィルメントも含めてやるかというと、だいたい外注するんじゃないでしょうか。
“いいとこ取り”が成立しないのだとすると、どろんこのような地道な作業を喜んでできる人たちじゃないと不可能だし、そこがRECLOの勝ち目だと思っています。弊社にはどろんこ大好きな人間が集まっているので(笑)。
夏までに数社参入すると聞いてますが、ある意味僕らは先出しじゃんけんがしたいのと、どうせやるのであれば会員数の伸びを印象づけるのに全力で走りたいと思ってます。資金もも集めていますし、まさしくスタートダッシュモデルです。「委託販売だったらRECLOだよね」というように、代名詞になるのが理想ですね。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」