大企業はスタートアップを育成できるのか--「KDDI ∞ Labo」の手応え - (page 2)

スタートアップ育成は“意外とできる”

 スタートアップがキャリアに求める支援というのは、恐らく他のプログラムとは少々異なる場合が多い。特に曖昧になるのが本体投資とアクセラレーションの切り分けだ。ほとんどのスタートアップにとって、両方に違いはなく共に「KDDI」という記号のみが目に映る。しかし、本体投資と起業育成は話が違う。 大企業で生きる彼らが本当にスタートアップを指導することはできたのだろうか。

――スタートアップという環境は、やはり大きな企業にいると想像できない要素を多分に含みます。育成にあたり、そのギャップや不安はどう感じましたか。

 もちろん議論はありましたよ。僕らの中には「マーケティングの部分はKDDIの方が知見があるな」という思いはありましたが、「まだ起業したばかりでどうしましょう」みたいな企業に入り込んで、“本当に僕らができるの?”という感覚はありました。

――成長した企業のサービスをさらに伸ばす方が楽ですからね。それでも、あえて困難なスタートアップ育成に挑戦したわけですが、手応えはいかがでしょう。

 意外にできるなと(笑)。まず、そもそもやることがたくさんあるじゃないですか、このステージでは人もいませんし。自分たちの事業と同じ感覚でも意外といける。ただし、ビジネスデベロップメントに近い領域で支援すると、「共同事業を一緒にやりましょう」といった目的のものも出てきてしまう。

――確かに。それならKDDI本体の投資部門や事業部門がありますからね。

 もちろんそこは否定しないんですけど、別にKDDI ∞ Laboでやらなくてもいいよねと。僕らはファンドを持っているし、ビジネスデベロップメントのスキームもあるので、そちらで投資まで含めた検討をさせてもらえればいいじゃないと。

――あくまでKDDI ∞ Laboのアイデンティを大切にする方向で勝負する。

 KDDI ∞ Laboで本当に“ゼロイチ”の企業育成ができるか自信がなかった分、やれそうな今の状況で今回(第6期)思い切りそちらの方向に振ってみて、本当に彼らと一緒にできるのかを試してみたいと思っているんです。それで舵を切ったということですね。

――なるほど。確かに第5期には完全にゼロから始めるようなスタートアップも含まれています。このタイミングでラボは純粋なアクセラレーターとしての位置づけを再確認したわけですね。何かきっかけになった出来事があったのでしょうか。

 「学生枠」を設けてみたことですね。学生と一緒に本当にできるのかという疑問があって、たまたま選んだチームが良かったのかもしれないのですが、意外とできるなと。そこで、もっと若くてステージが低いところにも挑戦してみようと思いました。

――新しい試みはあるのでしょうか。

 今までは、これからモノ作りをするフェーズの企業や、次のファイナンシャルのステージの企業など、異なるステージの企業が混在していました。なので、今回からは何を作りたいかにだけ集中しましょうと。ある意味、あるべき純粋なアクセラレーションプログラムに戻ったということですね。

――純粋なアクセラレーションプログラムに戻ったことが新しい試みになると。

 そうですね(笑)。あと、少し変わっているのが残りの3カ月間はフォローしますというものです。一旦卒業はしてもらいますが、ステージ的に次のビジネスデベロップメントになってくると、残りの3カ月で何か一緒にできる可能性や、一緒に大きくできる世界があるかもしれません。そうすると、投資を含めた話も出てくる気がします。

  • 「KDDI ∞ Labo」のオフィス

 それと、第6期以降の1年間はもっと異業種の方とのコラボレーションを増やしたいと思っています。他の企業と新しいことをやりたいと思って、R&Dや新規事業の方と話すと、実はKDDI ∞ Laboのような活動をしたいけれど、ヒト・モノ・カネ的に会社がまだそのフェーズに入っていないと言われます。

 確かにインキュベーションやファンドを立ち上げろと急に言われてもそう簡単にはできませんよね。OEM的にやる予定はないのですが、僕らと一緒にやって1チームくらい代わりにプログラムを支援してもらうとか、そういう仕掛けをいくつかの企業とやってみてもいいと思っています。

――ヤフーとMOVIDA JAPANが走らせている共同プログラムのようなイメージでしょうか。

 どちらかというと、僕らがソーシャルECサービスの「Origami」というベンチャー企業を通じて伊勢丹と新たな仕組みを作ったような、業界の違う方々のイノベーションに関わることを一緒に進めていきたいと考えています。すでにこういった世界がいくつかできそうなイメージもあるんですよ。

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