2013年2月にグループの投資事業について体制変更を発表したNTTグループ。NTTドコモがNTTインベストメント・パートナーズ株式会社の全株式をNTTより取得し、商号を株式会社NTTドコモ・ベンチャーズへ変更した。従来から運用してきた150億円規模のベンチャーファンド「NTTインベストメント・パートナーズファンド」に加え、新たに100億円のベンチャーファンド「ドコモ・イノベーションファンド」を組成。さらにインキュベーションプログラムの「ドコモ・イノベーションビレッジ(イノベーションビレッジ)」を立ち上げた。約10カ月を経て、第1期のインキュベーションプログラムを終了。11月末からは第2期プログラムの参加チームを採択し、支援を進めている。
NTTドコモ・ベンチャーズの設立から現在までの手応え、そしてスタートアップを取り巻く環境についてについてどう考えているのか。NTTドコモ・ベンチャーズ取締役副社長の秋元信行氏に聞いた。
設立当初にもお話ししたかと思いますが、我々としてはドコモに限定したシナジーを求めるのではなく、大きく成長して、その一部としてドコモと絡んで頂く。その結果利益を享受できればと考えていました。ドコモ・イノベーションビレッジの第1期のチームにしても「グローバルに見て欲しい」と言って採択しました。
そういった活動の途中でドコモでもiPhoneを取り扱うようになりました。以前、「採択チームがiOS限定でサービスを作る場合は(採択するのか)どうか」と聞かれました。たとえば、最初のステップとしてiOSでアプリを作り、その次にAndroidアプリに挑戦するというように、その理由が極めて合理的であればそれでも構いませんが、「何で1つのOSなのか」と採択候補に尋ねていたと思います。
結局iPhoneが出たので、結果オーライで(どちらのOSでアプリを作ってもよくなったということ)はあるのですが、当時のあの方針は間違ってなかったと思います。もちろんiPhoneを取り扱わなかったとしても変わりがないと思っています。
第1期から6チームが卒業しました。彼らのサービスはdメニューに掲載するなどして支援していますが、では6チームみんながドコモだけ向いているかというと違います。ドコモ以外も見ている人が多いと思います。
また、自分たちがどう成長するかをよく考えています。我々がねじ曲げるようなことができるチームではなく、やりたいことが定まっていたチームだと思っています。
彼らはグローバルな視点も持っています。たとえばカップル向けアプリ「Pairy」を開発するTIMERSは、家族向けの新アプリ「Famiry」を準備するほか、多言語化を進めています。「Decoalbum」などを開発するプライムアゲインも、Y Combinatorなどのプログラムに応募するなど、グローバルに踏み出すアクションをしています。
ジョージ(ケラマン氏。500 Startupsの日本担当パートナー)が来日するタイミングで、プログラム期間中に合計4回程度のメンタリングを実施しました。そのほか、500 Startupsのほかのメンターも、来日した際にコミュニケーションを取っています。
また逆に、500 Startupsのプログラムに参加するチームが来日した際は作業スペースを提供していました。もともと我々のインキュベーションオフィスを「スタートアップが集まる雑多な空間」にしたいという思いがあったのですが、それは一時的にではあっても実現できたかと思います。そこでの化学反応が起こったかというとまだまだですが、第一歩は踏み出せました。
そこはまだまだだと思います。もちろん、我々が「セミナーをやります」と言えばこれでもかと言うくらいに質問が来たりします。これは主催した側としてもうれしいことです。
ですが、「事業会社」のドコモとして考えればまだまだ足りないと思っています。
たとえば、スタートアップが「アプリをプロモーションしてほしい」「資金を出してほしい」と思っても、“NTTグループ”で考えると、ギブだけでもテイクだけでもうまくいきません。
グループ全体で言うと、「あのスタートアップの言うことはこんなにメリットがあるのか」と思わせないといけません。これは事業会社と組む際の基本戦略です。スタートアップと組むのはやはりハードルが高い。だからこそ価値があると思ってもらえるアプローチが非常に重要です。「頼む、もっと使い倒して」という気持ちはあるので、ドコモ・ベンチャーズとしてもまだまだお手伝いが足りていなかったなどの反省する点はあります。
1期もデモデイで区切りはついたとは言え、「卒業して終わり」ではなく、卒業生として一緒やっていくことを考えています。
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