オリンピックは、選手たちの世界最高の競技が集まるスポーツの祭典だ。連日の熱戦と素晴らしいプレーや演技、そして勝敗を分ける一瞬の出来事。こうした瞬間の一つずつを固唾を飲んで見守るのがとても楽しみなシーズンだ。最近ではテレビ放送だけでなく、インターネットを通じたストリーミングやオンデマンドでの試聴ができるようになり、自分のスタイルに合わせた観戦が可能になってきた。
筆者の住む米国では、テレビに加えてタブレットやスマートフォンのアプリ、ネットに対応するセットトップボックスでライブ中継やハイライトのビデオを楽しめる。今年のソチオリンピックは、米国ではNBCがホストしており、ケーブルテレビではNBC Sportsが競技を放送する。
またモバイルアプリやApple TVなどでは、ケーブルテレビ契約者としてログインしたり、ケーブルテレビのセットトップボックスに対して発行されるアクティベーションコードを入力したりすると、ネットを介して試聴できる。
しかし地上波ではほとんど放送されないのだ。そのためケーブルテレビや衛星放送の契約がない人は、テレビでもネットでも、ほぼ全くオリンピックを映像で楽しめないことを意味している。つい先日引っ越しのタイミングで、ネット契約だけを残してケーブルテレビを解約してしまった筆者は、ソーシャルメディアなどを頼りに競技の結果を知るしかなくなってしまった。
それに比べ、日本ではgorin.jpやNHKのモバイルアプリなどでライブ中継やアーカイブ映像を楽しむことができ、ネット経由での試聴の充実度が高い。もちろん日本向けの動画を米国から再生することは制限されている。テレビ放送のビジネスモデルが違うことに起因する対応の違いだが、いかにしてビジネスの持続性と視聴者を楽しませることとの両立を図るか、米国・日本ともに課題を抱えているように感じる。
ソチオリンピックの無線通信機器スポンサーはSamsungだ。Samsungからは選手全員にGALAXY Note 3がプレゼントされたという。インターネットでは、Samsungが選手に対して、開会式で他のメーカーのスマートフォンのロゴを隠すよう求めたという話も出ていたが、IOCとしてはその様な制限をかけていないとしている。
The Olympic Partner(TOP)というプログラムは、非常に巨額のスポンサー料を支払う代わりに、オリンピックを通じたマーケティング活動や、広告等へのオリンピックロゴの使用が認められる。オリンピックのパートナーは、1業種1社と決められており、スポンサー料は4年間で最大100億円ともいわれる。
Samsungは1988年のソウルオリンピックでローカルスポンサーを務めた後、現在のカテゴリーのスポンサーを1998年の長野オリンピックから担当している。2016年のリオデジャネイロまで延長された。
オリンピックの開会式では、選手が行進しながらカメラなどでその様子を撮影する風景が映し出される。選手に配布したGALAXY Note 3で撮影している風景を作りたかったのは、世界中に中継され、プロダクトプレースメントとしても非常に大きな効果があるからだろう。特にこれからさらにスマートフォン市場が盛り上がるであろう新興国の人々にアピールする絶好の機会だったはずだ。
スポーツビジネスの多くは、こうしたマーケティング活動を行いたい企業からのスポンサーシップによって成り立っているところが大きい。オリンピックを「スポーツビジネス」の1つとくくってしまうことに議論もあるが、ブランドをこうした大会の中でいかにスマートに展開していくか、新たなアイデアの必要性を感じる1コマであった。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
住環境に求められる「安心、安全、快適」
を可視化するための“ものさし”とは?
「程よく明るい」照明がオフィスにもたらす
業務生産性の向上への意外な効果
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス