2014年は本格的に、モノのインターネット(Internet of Things)が普及することが期待されている。1月にラスベガスで開催された世界最大の家電展示会International CESや、Googleによるインターネットに接続された学習するサーモスタット「Nest」買収など、早速大きなニュースが飛び込んできている。
Nestは、AppleでiPodなどのデザインを担当したAnthony Fadell氏がCEOを勤める会社だ。最初のプロダクトであるサーモスタットは、人の行動パターンやその部屋の温度変化の傾向、気象条件に合わせて冷暖房をコントロールすることで、使用する電力を削減しようという試みだ。iPodのような、クリックとホイールの回転という操作方法とシンプルなデザインによって注目され、Googleによる買収となった。
今後、プロダクト企業やエンジニアリング企業出身というキャリアを持つ人がスタートアップで、モノのインターネットに関連する製品が注目されていくことになるだろう。今回ご紹介するBlossom Coffeeも、そうしたキャリアを持つ人たちのスタートアップだ。
同社の創業者であるJeremy Kuempel氏は「人々の生活スタイルを最も大きく変えたのはモバイルデバイスとそこで動くソフトウエアであり、こうしたイノベーションは情報通信産業以外のすべてに適用できる」と語る。身の回りのあらゆるモノを、スマートフォンとアプリ的に解決する手法は、生活に関わるモノのインターネットによるイノベーションの1つのデザインパターンだ。
Blossom Coffeeは、社長を務めるKuempel氏による、コーヒーの抽出のための「発明」から生まれた製品だ。
Kuempel氏は機械やインタラクションのデザインが専門でMITを卒業し、Apple、Tesla Motor、BMWでキャリアを積んでBlossom Coffeeを創業した。人が操作するマシンのエンジニアリングによる問題解決や性能向上に取り組んできたキャリアの持ち主だ。
またチーフエンジニアを務めるMatt Walliser氏は、10歳からロボット作りとプログラミングを経験し、NASA Amesなどで組み込み機器や電子機械の開発に携わっていた人物である。両氏が、サンフランシスコ市内のガレージで、コーヒーマシンにフォーカスして起業したのがBlossom Coffeeだ。
筆者は2012年に、サンフランシスコ周辺のコーヒーカルチャーに関する書籍を共著した。コーヒーの味の決め手となるのは、生豆の品質、焙煎に加えてどのように抽出するか、というテクニックだと経験上でも取材をしても感じた。特に抽出温度や抽出時間は、繊細な風味を左右する重要な要素となり、豆の種類や焙煎に合わせて変化させる必要がある。これはドリップとエスプレッソに共通する課題だ。
圧力をかけて10秒前後で抽出するエスプレッソは、機械の性能向上による味の追究、つまり味に直結するエンジニアリングがなされていたが、ドリップコーヒーのマシンはお湯が上から下に落ちる以外の「特別なこと」が行われていなかったという。つまり同じマシンなら豆の種類に関わらず、同じようにドリップされてしまう上、お湯の温度は自然に低下していくだけだった。
Kuempel氏はここに着目し、コーヒーの抽出中の温度を一定に保つ「Blossom Core」を開発した。同社のガレージで、同じ豆を温度が2度違う設定で抽出してもらったが、たった2度の違いでもコーヒーの口当たり、広がる香り、酸味の傾向などが全く違うことに驚かされた。
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