スクエニ和田会長と山本一郎氏が語ったゲーム業界の潮流と未来 - (page 2)

 この話のなかで、2009年にEidos(アイドス)を買収したことの意図についても触れられた。欧米市場の拡大を視野に入れていただけではなく、技術的な分散もテーマとしてあったと和田氏は語る。「(スクウェア・エニックスが)RPGが強い会社であるため、RPGに特化した技術がいい意味でも悪い意味でも伸びていくんです」(和田氏)。EidosはRPGのみならず、アクション系やシミュレーション系などさまざまなジャンルを手がけていることに加え、特にそれらの自社IPを持っていることが重要だったという。和田氏によると、自社IPでなかった場合、スタジオを買収しても基本となるコードが無いといった事例もあるのだとか。

 前述したように、ドラゴンクエストやファイナルファンタジーシリーズに代表される、RPGがお家芸というぐらいに人気ジャンルとして定着しているが、このジャンルの今後や先行きについて山本氏から質問された和田氏。ゲームに没入できることや長い期間遊んでいられる点においては素晴らしいとする一方で、ゲームデザインや基本構造が同じになってしまうと指摘。そして別物のように見せるには技術力が必要であり、さらにそれ以外のソリューションもあることを検討しておく必要があるとしている。

ゲーム業界や制作にどのような変化が起きるか

 黒川氏は事前の打ち合わせのなかで、昨今のゲームにおけるトレンドの移り変わりは早く、むしろトレンドが無い状態。そのようじゃ状況下では流行しているものをモチーフにするのではなく、ある種のインディー的な、自らが思うままのゲームを作るのが今の時代にマッチしていると思ったと述べ、今後のゲーム制作のあり方について切り出した。

 実際に、今に続く人気シリーズや、最近ではスマホゲーム「パズル&ドラゴン」のヒットが記憶に新しいが、山本氏はこれらがヒットするための仕掛けなどは尽力をしつつも、大ヒットを想定して作られたものではなく、次の10年を支えられるようなコンテンツをプロデュースするのかと考えたときに「参考事例はないのでは」とコメント。和田氏も、ゲームをヒットさせるにロジカルな説明することは絶対不可能だと同意。そのような状況のなかでは、散弾銃のようにコンテンツを広範囲に展開させ、当たったところにスナイパーライフルのごとく狙い撃ちしていく方法が有効だと語る。

 またそのコンテンツについても、すでに当たっているものを追いかけるようにまねても当たらないことが多く、自ら狙うことが重要であり、最初の一発を狙うまで耐えしのぐしかないと和田氏は続けた。山本氏もソーシャルゲームはおおむね8カ月程度でトレンドが変わってしまう市場であり、そもそも二番煎じのタイトルは旬が終わっていると指摘する。

 この先のゲーム業界の展望について、和田氏はスマートデバイスの普及、PS4やXbox oneなど新ゲーム機の登場により、開拓できる市場が広がっているのは確実だと語る。その市場を本気で追いかけ始めたのは2~3年前のことであり、練度が高まっている状態でもあることから、2014年から2015年にかけてビジネスモデルの新しい芽が出てくるのではと期待を寄せていた。

 また作り手であるクリエーターについても、プラットフォーム側がインディーズで活動しているクリエーターに目をかけ始めている状態であることや、クラウドファンディングのような資金調達方法なども出てきている背景から、ゲーム新興国のクリエイターが台頭してくるのも時間の問題だとし、クリエーターの層が世界的に厚みを増してくるという見解も示した。

 さらに、会ったことも無いような多国籍のクリエイターが、ネットを通じて開発を行うクラウドワークスについても言及。山本氏によると実際に活動しているチームもすでにあるという。ただし現状では、物語性のあるものなど、ユーザーをかき立てるようなものはまだまだ難しいという。物語の世界観の根幹や作り込み、何を作るかというコンセプトワークは、山本氏いわく「日本人の妙なこだわりでやっていける」。その一方で、アニメやゲームの作画などは海外や外部に置き換えがきくような世界になりつつあり、根幹のコンセプトワークまで置き換えられるようだと厳しくなるのではと警鐘を鳴らしていた。

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