稲船敬二氏と吉田修平氏が語ったPS4やクラウドファンディングの取り組み

 11月21日、サイバーエージェント・ベンチャーズにて「エンタテインメントの未来を考える会 黒川塾(十四)」と題したトークセッションが行われた。コラムニストの黒川文雄氏が主宰、エンターテインメントの原点を見つめなおし、ポジティブに未来を考える会となっている。

 今回は「革新者たる所以(ゆえん)」と題し、ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)ワールドワイドスタジオ プレジデントの吉田修平氏と、comceptのCEO/コンセプターの稲船敬二氏が登場。北米で順調な滑り出しを見せたPlayStation 4(PS4)についてや、稲船氏が「Mighty No.9」プロジェクトを通じて取り組んだクラウドファンディングのことなどを中心に、日本や海外のゲーム業界を取り巻く現状などさまざまなことが語られた。

左から黒川文雄氏、吉田修平氏、稲船敬二氏
左から黒川文雄氏、吉田修平氏、稲船敬二氏

クラウドファンディングに挑んだ「Mighty No.9」

 「Mighty No.9」は稲船氏が取り組んでいる新作ゲームで、開発費をアメリカのクラウドファンディングサイト「Kickstarter」を通じて調達を行った。そして支援者は7万人以上、調達額も約4億円になったという。

 稲船氏はクラウドファンディングのメリットとして、ユーザーとクリエイターが直接結びつくことを挙げた。いくらクリエイター側が自分たちの作りたいものを提示しても、ユーザーが興味を持たなければ作れない。ユーザーとクリエイターが相思相愛になって初めて動き出せるというところにやりがいがあるとしている。企業の都合を取り払ったゲーム作りが理想的と思い、失敗も覚悟の上でクラウドファンディングに挑んだという。「Mighty No.9」における出資者の地域について、アメリカを中心として世界各国から集まったが、アジアの中でも日本はかなり少なく、中東からの支援がかなり大きかったとしている。

 「Mighty No.9」の調達額については、当初からある程度の見込みはあったものの、ひとまず2億円で成功と考えていたとし、コンシューマ版のリリースとなる2億5000万円で初めて喜んだという。さらに調達額が集まり、最終的にはPS4版でのリリースも決まった。「要望も多かったですし、次世代機まで含めたハードで展開できることは全てのユーザーに届けられることになるので、リリースできる調達額を達成したときはうれしかった」(稲船氏)。また“命綱”と表現した開発費が可視化されて上昇していく様子は、モチベーションが上がりチームの結束も良くなったと振り返った。

 その成功要因のひとつとして、リワード(支援者に対する褒美)に関するパートナーについては、最初から海外の業者としっかり組んだことと稲船氏は分析する。「ゲームこそ日本で作りますが、パートナーはほとんど海外。特にKickstarterが米国ベースのシステムなので、米国の方の気持ちがわかるパートナーと組めたのが大きい」(稲船氏)。

 Kickstarterは日本から直接エントリーはできず、米国の法人か代理業からでないとエントリーできないため、このためにcomcept USAを設立。ほかにもにKickstarterへの手数料や、支援者に対するリワードの作成などがあり、集まった約4億円が丸々開発費に充てられるというわけではなく、手間暇もかかることだという。

 「Mighty No.9」の今後の展開として、ユーザーとのコミュニケーションが取れるコミュニティサイトを近日開設することを明らかにした。基本的に支援者限定のサイトとなるが、一般のユーザー向けにも部分的に公開することを考えているという。

ゲーム熱が高まっている中東地域、シェア機能に注目のPS4

 中東地域については「最近わかったことですけど中東地域は熱いです」(吉田氏)といい、稲船氏もバーレーンのゲームショーに視察した際に熱気を感じたと語る。吉田氏はPlayStation Networkにおいて、アラビア語のユーザーが急増し、プレイスーテーション関連のアラビア語のサポートを求める声が、吉田氏のTwitterに届けられているという。

 中東地域のほかに南米もゲーム関連の盛り上がりを見せているが、地元にゲーム制作産業がそこまで発達していない地域ではゲームクリエイターの存在が珍しく、さらに日本のゲームを強くリスペクトしている背景もあってか、スターのように憧れる存在になっているという。そのことを象徴するエピソードとして稲船氏は、電車内でブラジル人に熱心に話しかけられ、さらにそのブラジル人は後日テレビ番組で「日本に来て一番良かったこと」に、稲船氏に会えたことと回答した出来事を語った。

 北米では発売24時間で100万台の実売を記録したPS4。吉田氏によると予約の段階で100万台は超えていたが、関係者の間では一週間程度で実売100万台と予測していたため、慌ててプレスリリースの段取りを整えたと明かした。この好調ぶりに、黒川氏はPS4が2014年3月までに500万台の販売目標を掲げていることに触れたが、到達するかどうか、その時期についての質問には「ビジネスではなく、コンテンツ開発の人間なので発言できない」(吉田氏)と回答は避けた。日本では2014年2月22日発売予定で、北米の好調ぶりに、日本での販売分が気になるところだが、各地域ごとに生産計画が決められていると説明。北米の好調により日本の販売分がまわされるといった影響はないものと思われる。

 PS4ではワンボタンでゲームのプレイ動画をシェアできる機能が搭載され注目を集めている。吉田氏はユーザーが実際にシェア機能を使ってプレイしている様子を見て触発され、ディナーの予定をキャンセルしてまで、自らゲームプレイの配信を行ったという。たくさんのユーザーが閲覧していたようで、プレイの反応やわからなくなったときに攻略のポイントを教えてもらうなど、たくさんの人と遊んでいる感覚が味わえると感想を語り「やれば絶対にハマります」と断言するほど魅力的だという。

 シェア機能についてはPS4の原案段階で、ゲームプレイの録画機能を搭載し、いい部分だけを抜き出してFacebookなどに投稿できるような仕組みの案があったという。そこにあるゲームクリエイターが、コントローラに専用ボタンを付けて、シェアしたいときにすぐできるよう提案をしたという。そしてその案は即時に採用された。「ゲームの作り手とハード開発者が一緒に作り上げたのがPS4。ゲームの作り手やユーザーの気持ちや使い勝手を考えて作られています」(吉田氏)

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