スマホで銀行を「手のひら」に--金融のカジュアル化を目指すじぶん銀行 - (page 2)

従来とは“逆の発想”でイノベーション起こす

 このように、じぶん銀行は約3900万人の顧客を抱えるKDDIの携帯電話技術やサービスと、約4000万口座を保有する三菱東京UFJ銀行のメガバンクとしての信用力や金融知識を兼ね備えた銀行サービスだ。しかし、なぜ三菱東京UFJ銀行としてではなく合弁会社でサービスを提供することにしたのか。

 この疑問について吉川氏は「これまでの銀行はまず支店があり、その補完チャネルとしてATMやネットバンキングがある。人事制度から事務手続きまですべて支店ありきになっているため、発想を変えて新しい枠組みを作らないとイノベーションを起こすのは難しい。そのため、じぶん銀行ではこれまでとはまったく逆の発想で、まずモバイルバンキングを、次にPCバンキングを、そしてATMを用意した」と語る。

  • じぶん銀行 執行役員 経営企画担当の吉川徹氏

 じぶん銀行がサービスを開始した2008年当時はまだフィーチャーフォンが主流だったため、「顧客に説明してもビジネスモデルを理解してもらうのが難しかった」と吉川氏は振り返る。同社のユーザーが著しく増加したのは2011年に親会社のKDDIがiPhoneの取り扱いを開始したタイミング。Androidスマートフォンも続々と発売されスマートフォン自体のシェアが拡大したことで、同社のユーザーも右肩上がりに増加し、現在は約160万口座を開設するまでに成長した。また創業時から赤字が続いていたが2012年には黒字化も果たした。

 モバイルに特化していることもあり、スマートフォン経由のアクセスが全体の7割と高く、特にスマートフォンと相性の良いFXの利用などが好調という。ユーザー層は20~40代が8割を占め男女比率はほぼ同等だ。また、KDDIのグループ会社ではあるが、当初からどの通信事業者のスマートフォンからも利用できる“キャリアフリー”を採用している。そのため、auユーザーが半数を占めるが、NTTドコモやソフトバンクモバイルのユーザーにも利用されているそうだ。

 これまでの取り組みやビジネスモデルが評価され、じぶん銀行は11月に開催された米国最大規模のリテール金融イベント「BAI Retail Delivery 2013」で発表された「BAI-Finacle Global Banking Innovation Awards 2013」において、日本の銀行で初めて賞を受賞した。3回目となるこのアワードは2011年以降にリリースされたサービスが対象で、じぶん銀行はクイック口座開設アプリなどを中心にアピール。全世界から応募した210の銀行の中から、上位6社に選ばれた。

じぶん銀行を“普段使い”のサービスへ

 じぶん銀行が今後注力するのは、ネットとリアルを連動させたO2O(Online to Offline)の領域だ。消費者はたとえば外食であれば、まず店名を検索して「食べログ」などのサイトで評価をチェック、地図アプリを使って店に行き、店内では料理の写真を撮ってSNSに投稿する。多く人にとってスマートフォンの出番はここまでだが、同社では今後、その先の決済までスマートフォンで済ませることが一般的になると見ており、この領域に向けた商品を充実させることで事業の拡大を狙う。

 また、ユーザー数は増加傾向にあるものの、サービス自体の認知度が5割程度とそこまで高くないことが課題だと吉川氏は話す。同社によれば、口座開設や各種取引、金融商品、電子マネーなどの機能をすべて利用できるスマートフォンアプリは、12月時点ではじぶん銀行のみとなっている。今後はこの優位性を伝えていくことでさらにユーザー数を拡大していきたい考えだ。

 「モバイルバンキングで顧客の金融ニーズを満たしつつ、同時に収益もあげられるビジネスモデルを確立したい。また、定期預金だと一度預けたら次に利用するのは1年後だったりするが、じぶん銀行では外貨預金など運用型の商品のラインアップも充実してきている。これからは、スポーツ振興くじの『au toto』をはじめ、ユーザーの普段使いのお金をサポートするサービスやコンテンツを増やしていきたい」(吉川氏)。

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