京都で開催中の招待制イベント「Infinity Ventures Summit(IVS)2013 Fall Kyoto」。第3セッションでは、オンラインメディアを手がける起業家やオンラインメディアの編集長が登壇。メディアの役割や成長について語った。
インターネットの登場以降、メディアのあり方も変化してきた。個人がブログメディアを立ち上げられるようになった一方で、テレビや雑誌、新聞といった旧来のメディアは変化を求められている。
このセッションでは、東洋経済新報社で東洋経済オンライン編集長の佐々木紀彦氏、nanapi代表取締役の古川健介氏、日本ジャーナリスト教育センター理事の藤代裕之氏、ヤフー マーケティングソリューションカンパニー マーケティングイノベーション室室長の友澤大輔氏が登壇。日本経済新聞社 論説委員兼産業部編集委員の関口和一氏がモデレーターを務める中、それぞれのかんがえるメディアのあり方、マネタイズの方法論などが語られた。
関口氏:「メディア」にはいろんな意味がある。ジャーナリズムやオピニオン、コンテンツプラットフォーム、広告宣伝、コミュニティ媒体など。それがネットの中でぐちゃぐちゃになってしまっている。
うち(日経新聞)の幹部がヤフーのコンテンツを見ると、仕入れコストが全然違う。我々はコンテンツの作成にお金をかけ、それをクローズドな場に出している。利益率は全然違う。そういうことがある中で日経新聞電子版を始めた。現在電子版の会員は200万人、有料会員は30万人以上いて数字も伸びている。だが5年先のメディアってどうなるのか。東洋経済の紙の状況はどうなっているのか。
佐々木氏:雑誌と新聞との違いは宅配制度。新聞のように習慣化されていると影響は少ない。雑誌は地下鉄でスマートフォンを見られるようになって売上が減った。雑誌には「ファン」と「暇つぶし」の読者がいるが、そのうち「暇つぶし」の需要はスマートフォンに取られてしまった。
藤代氏:新聞は見られなくなったと感じる。しかし地方では紙媒体はまだまだ大丈夫な状況だ。おじいちゃんおばあちゃんがみんなタブレットを簡単に使えると思ったら大間違いで、今後はそういう人達が増えていく。この問題は地域によって分断化する可能性もある。
古川氏:PCだと「検索文化」があるが、スマートフォンだと情報に受動的な印象がある。また、(雑誌の)「電子版」は紙に近い感覚がある。タブレットで紙メディアが息を吹き返すのではないか。
関口氏:PCをビューワーとして使っていた人はタブレットに移っている印象がある。
友澤氏:ヤフーでは、ディストリビューションとチャネルを作ることをやってきた。我々は媒介者であって、コンテンツを作っていない。コンテンツを作れる会社は紙でもデジタルでも生き残れるし、逆にディストリビューションなら自分たちでやらないといけない。
ディストリビューションしている自分たちがコンテンツを作ろうとしてもなかなかかなわない。餅は餅屋。
関口氏:佐々木さん東洋経済オンラインを改革したが、同媒体は過去に5回くらい改革しているはず。今回は何を改革したのか。また、外部の執筆者から原稿をもらうのは大きな方向転換。それに対する社内の議論や危機感はなかったのか。
佐々木氏:雑誌は新聞より落ちが激しい分、危機感は強い。また、これまでは「紙とウェブは違う」という発想は大事にされていたが、紙の発送から逃れられなかった。今回はベンチャー的に1つの部署を作って、ゼロベースで考えてウェブに最適化されたメディアを作ったため成功したのではないか。
関口氏:日経新聞でも「Web刊」では外部の書き手によるコンテンツを掲載している。そのため、社内の記者からは「自分たちの場が奪われている」となった。東洋経済ではそうならなかったのか。
佐々木氏:そこは意図的にやった。文句があっても聞かない。
関口氏:(メディアとして)専門の教育を受けていないことで、何か問題になったときどうやって戦い、守るのか。
佐々木氏:そこは難しい。すでにそれに近いことは何回かあった。法務上の責任は共同だが、注意していかないといけない。メディアが「知らぬ存ぜぬ」ではいけない。そういう意味では目利き能力がより重要になる。
藤代氏:競争は本来望ましい。中の論理がマーケットに見放されるのは仕方ない。しかし非営利メディアなど、書くことへのモチベーションは変わってきた。お金じゃない目的で書く(人がいる)。
関口氏:Yahoo!ニュースのインパクトは大きい。そこに出ることのインパクト大きいということはある。
友澤氏:ヤフトピ(Yahoo!ニュースのトピックス)編集部は目利き。見出しを作るところにフォーカスをしている。通常のジャーナリストとは違うスキルで動いている。
古川氏:最初はnanapiもCGMでサービスを始めた。ただ、「楽しみ」で書くと、コンテンツに偏りが出る。例えば「にんじんの切り方」は楽しみだけで書けないし、かといってプロが書くまででもない。なので、こういったコンテンツは主婦に数百円で書いてもらっている。
CGMで精度の高いコンテンツを書いてもらうには、例えばにんじんの切り方であれば「写真入りで書いて下さい」と依頼するなど、依頼に条件をつけることで間違いが起こらないようにしている。また、専門知識が必要な病気のコンテンツなどは、専門機関に依頼したり、取材したりして書いている。実際新聞でも記事が間違っていることは多い。間違う確率は変わりないと思うので、間違ったときいかに対応できるかが重要。
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