楽天は11月6日、医薬品ネット販売規制問題に関して、緊急記者会見を開催した。
この会見は、一般用医薬品のインターネット販売に関して、医療用医薬品から一般用医薬品に転用(スイッチ直後品目)後、23品目は最長3年間は販売を認めず、5品目を販売対象から外すことを決めたという田村憲久厚生労働省大臣の発言を受けたもの。政府は、臨時国会において改正薬事法案を提出し、成立後、新たなネット販売ルールの施行を目指しているという。
会見には、楽天代表取締役会長兼社長の三木谷浩史氏、同社代表取締役副社長の国重惇史氏、ケンコーコム代表取締役の後藤玄利氏、中央大学法科大学院教授の安念潤司氏が登壇した。
三木谷氏は、田村大臣の発言を受け「安倍政権の成長戦略スピーチにおいて、『インターネットでの一般用医薬品の販売について販売を解禁する』と明言したにもかかわらず、規制強化へと動いていることは大変遺憾だ」と語気を強める。
国重氏は、医薬品のネット販売規制問題に関して、インターネットを活用した販売の特性と争点について語った。
ネット販売の特性として、ネットを通じた医薬品の情報提供および収集の確実性、時間や地理、身体の制約なく利用者が情報にアクセスできること、医薬品の効能や副次的効果に関する説明確認の再現性が高いこと、利用者のトレーサビリティを通じた服用後の検証などの安全性が確保できること、ネットを通じて迅速な対応ができることなどを挙げる。
「1月11日の(ケンコーコムが起こした行政訴訟の)最高裁判決においても、ネット販売を含む規制に関しては、憲法上の職業活動の自由を侵害しているという判決が出されている。ネット販売のメリットを認知してもらいたい」(国重氏)
スイッチ直後品目は、成分や用法、用量、副作用に関して専門家の検討が必要とあるが、ネット販売の有無は問われていない。しかし、8月と10月に3度開かれたスイッチ直後品目の検討に関する専門家会合においても、対面における安全性を主張するばかりだったと国重氏は語る。ITを活用した医療サービスの低コスト化や高品質化、民間の創意工夫による効率的なサービス提供と新たなマーケットの創造の観点からも、ネット販売の解禁は経済成長の大きな柱になると主張した。さらに国重氏は「改正薬事法案において、処方せん薬、スイッチ直後品目の対面販売のみならず、正当な理由なく販売をしてはいけない、という代理販売規制もどさくさに紛れて通そうとしている」と指摘する。
ケンコーコムは、一般用医薬品のネット販売規制に関する行政訴訟において勝訴し、1月から医薬品のネット販売を再開した。現在までのネットの販売実績をもとに、ネット販売の安心、安全性について後藤氏は主張した。
「発売再開から10カ月間、合計で約75万個の一般用医薬品の注文を受けた。電話相談も2652件、メール相談も2885件あり、薬剤師と相談しつつ対応した。さらに、注文状況などをもとに薬剤師から個別確認の連絡を648件実施し、そのうち187件に関しては確認の結果、販売を断るといった顧客管理や安全性の考慮を実施してきた。こうした取り組みによって、現在まで副作用の発生は報告されていない」(後藤氏)
スイッチ直後品目に関しては、購入後5日を目処に、購入された方に対して副作用リスクや薬剤師への相談窓口の案内といった情報提供を徹底したという。トレーサビリティをもとに、スイッチ直後品目の処方せん薬への転換が起きた際には、顧客への連絡や製品回収を実施する体制も整っており、「ネット販売によって医薬問題に関してのセーフティーネットができている」と後藤氏は語る。しかし、こうしたネット販売規制の動きを受け、今回の改正法案が正式に進んだ場合は、訴訟を通じて司法の場で政府と争う構えだとした。
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