SF作品に出てくるような話に聞こえるかもしれない。実際の手足のように動いたり、曲がったり、感じたりするだけでなく、人間の思考に直接的に反応し、さらに感覚フィードバック(足下の草の感触や手足が空中に浮かんでいる感覚)を脳に直接返すことさえできる義肢が開発されている。
負傷した退役軍人の生活向上に取り組んでいる米軍が、資金面で積極的に支援しているため、そうした義肢はもはや現実離れした夢物語ではなくなった。映画「ブレードランナー」並みの補綴術というのは今でも遠い未来の空想だが、シカゴリハビリテーション研究所(Rehabilitation Institute of Chicago:RIC)と米国防高等研究計画局(DARPA)、そして成長分野である次世代義肢を開発する企業セクターの先駆的な研究により、見事な性能を備えた思考制御型バイオニック義肢が現代の現実となっている。
RICは9月、同研究所のバイオニック研究によって初の思考制御型ロボット義足を生み出したことを発表した。RICの研究はこれまでも、その価値にふさわしい報道をされており、何度も記事の見出しを飾っている(1つの人工装具で103段の階段を上ったという事例もある)。しかし、Levi Hargrove博士が率いるチームは、決定的な研究成果をThe New England Journal of Medicineに発表するのを待っていた。8年以上前に開発が始まったそのバイオニックハードウェアは、標的化筋肉再神経分布(Targeted Muscle Reinervation:TMR)手術という画期的なアプローチと統合された。TMR手術は、神経を健康な筋肉へ再分布することによって、脳がバイオニック義肢のさまざまな部分を動かせるようにするものだ。
しかし、思考制御型義肢はまだ初期段階にある。目標は、いつか感覚で動かせる義肢をより低コストで提供することだ。その義肢は、より正確な動きを実現するためにインプラントを使用するかもしれない。バイオニクス研究が順調に行けば、今後10年間で補綴術の世界が根本的に変わるだろう。
2009年、Zac Vawterさんはバイク事故に遭ったことが原因で、右足の膝から下を手術で切断した。それとほぼ同時期に、RICとノースウェスタン大学はある手術法の開発に取り組んでいた。後にその手術法によって、研究者は損傷を受けた筋肉から健康な筋肉へ神経を再分布し、傷ついていない神経インパルスを使って神経経路を変更できるようになる。
標的化筋肉再神経分布(TMR)というその手術は、2009年にGregory Dumanian博士とTodd Kuiken博士によって最初に開発されたもので、バイオニック義手や義肘に効果を発揮した。こうした義肢は、二頭筋や胸筋のような大きい筋肉に再分布された神経を使って、それらの健康な筋肉の収縮を手首や腕の動きに変換することができる。
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