そこで、シアトル生まれのVawterさん(現在32歳)はTMR手術を受け、米陸軍からの800万ドルの資金提供、さらにDARPAからの資金援助に支えられた複数年の研究に参加することを志願した。DARPAも補綴術の分野で重要な役割を果たしており、「Revolutionizing Prosthetics」(補綴術の革新)プログラムで最先端のバイオニック義腕の発展に貢献したほか、「Reliable Neural-Interface Technology」(信頼性の高い神経インターフェース技術)ではバイオニック義腕を動かすことを可能にする科学の進歩に寄与している。
では、Vawterさんの症状の場合、TMRは具体的にどのように機能するのだろうか。
RICのHargrove博士のチームの生物医学エンジニアであるAnnie Simon博士は、「事故以前には足首まで伸びていた神経をハムストリングに再分布した」と述べた。
つまり、手術を終えたVawterさんが足首を動かそうと考えると、再分布された神経がハムストリングの筋肉を収縮させるということだ。バイオニック義足と足の残っている部分をつなぐ成型プラスチックの内部には、皮膚上電極が設置されており、その電極がハムストリングの筋肉の収縮を感知し、RICのアルゴリズムによって、それを膝から下の部分の正確な動きに変換する。
「この義足は学習し、足を切断した人にとってこれまで考えられなかった活動を可能にする。例えば、座る、歩く、階段や坂を上り下りするといった動きにスムーズに移ることができ、座っているときに足を組み替えることも可能だ」(Hargrove博士)
Vawterさんが切断したのは膝から下であり、健康な神経が残っていたため、TMRの理想的な候補者だった。Simon博士は、「健康な状態を維持している神経は、切断から10~20年が経過した後も、失われた関節まで届いていた情報を伝える」と説明した。
しかし、皮膚上の電極の使用は非侵襲性なので、より複雑な手足切断手術を経験したがTMR手術はまだ受けていないという人でも、RICのバイオニック義足を使うことができる。Simon博士は、「RIC手術を受けた方が、足首を少し上手に制御できるようになる」と述べ、TMR手術を受けた人の方が少し多くのセンサを持ち、より正確な神経ネットワークを利用できることを強調した。
RICのHargrove博士と同氏のチームは、3~5年以内に自分たちのバイオニック義足を家庭でのテスト用に提供できると考えている。RICは現在、思考制御型のバイオニック義足を1つしか所有しておらず(バンダービルト大学が8年をかけて開発したもの)、家庭での使用など、Vawterさんにはまだ実現していないことがある。
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