通信のゆくえを追う

そのサービスは誰のため?--キャリア中心の開発体制が日本のメーカーをダメにした - (page 2)

菊地泰敏(ローランド・ベルガー)2013年07月22日 07時30分

 このもっとも典型的な例が日本であったと言えよう。それゆえキャリアの言われるがままにさまざまな機能を盛り込み、独自の進化を遂げたことから「ガラパゴス」と呼ばれたことは記憶に新しい。

 その結果、日本の端末メーカーは海外市場においてはほとんどといってよいほど売れず、淘汰されてしまったと言っても過言ではないだろう。日本の端末メーカーが見ていたのはキャリアであり、ユーザーではなかった。キャリアの負担で開発を行い、キャリアにまとめて買い上げてもらえる。彼らにとってキャリアがお客さんだったのである。

 この関係に一石を投じたのがAppleである。

 AppleがiPhoneを世に出すことで、ユーザーはiPhoneを選び、結果、iPhoneを使えるキャリアが選ばれる、という新たな関係が生まれたのである。近年のソフトバンクの躍進は、iPhoneなしに語ることはできないであろう。

 また、モバイルナンバーポータビリティ(MNP)により電話番号を変更する必要がなくなったことや、OTT(Over The Top)によるキャリアフリーのコミュニケーションサービス(gmail、 yahoo!メール、Skype、LINEなど)が提供されるようになったことも、これを後押しした。

 余談だが、1999年、当時のJ-Phoneが藤原紀香を使った「写メール」のCMでシェアを伸ばしたことを覚えておられる方もいるのではないか。当時MNPが可能であれば、さらに大きなシェア獲得が達成できたかもしれない。

 Appleの動きを見た他の端末メーカーも、当然のことながらiPhoneへの対抗商品を開発、販売するようになる。その結果、いわゆるスマートフォンのカテゴリに属する商品間の差別化の要素が薄れてきた。同じようなユーザーインタフェース、同じような機能、同じような外観。

 そこで、なにか目新しいモノを求めて各社、特にキャリアの動きが活発になっている。なぜキャリアか? その目的は少しでも自分(キャリア)がエコシステムの頂点に(再び)立てるように、ということなのである。

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