クアルコム、タブレットを使ったデジタル教育を支援

 クアルコムは5月16日、通信制高校のルネサンス高等学校とルネサンス豊田高等学校の生徒にタブレット端末を配布し、デジタル教科書での学習を支援する「タブレット×デジタル教科書」プロジェクトを開始したことを発表した。ルネサンス高校が2013年度末までに導入する予定の5000台のタブレットのうち、200~300台分の金額を同社が寄付する。

  • 左から、クアルコムジャパンのクリフォード・フィッキ社長、ルネサンス高校の桃井隆良校長、米クアルコムのクリスティン・アトキンス氏

 今回の取り組みは、クアルコムが推進する地域社会の課題を解決することを目的とした企業市民活動「Wireless Reach イニシアチブ」の一環となる。同社では、2011年からルネサンス高校とスマートフォンを活用したオンライン学習プロジェクトを展開しており、現在は生徒の約9割がスマートフォンを導入している。また、全履修科目がスマートフォンに対応しているという。

 ルネサンス高校ではいち早くフィーチャーフォンを学習に取り入れていたが、端末スペックなどの問題から提供できる学習コンテンツが一部に限られていた。これがスマートフォンに変わったことで、画面上での読み書きやスムーズな動画再生も可能になり、学習の幅が大きく広がった。

 同校によれば、スマートフォンを導入したことで生徒全体の学習時間が増加傾向にあるほか、スマートフォン利用者の方がフィーチャーフォン利用者よりも成績が高く、回答速度も早かったという。また、フィーチャーフォン利用者が減少したこともあるが、学習レポートの正答率もスマートフォンの方が高い傾向にあるという。

  • 2011年から全生徒がスマートフォンを使って学習

  • フィーチャーフォンとスマートフォンの学習方法の違い

  • タブレットならではのデジタル学習方法

 同日の記者発表会で登壇したルネサンス高校の桃井隆良校長は「スマートフォンやタブレットを使った学習の最もいいところは、『勉強するぞ』という心理的な抵抗感なしに、すき間時間を使ったり、いろいろな場所で勉強ができるところ」と語り、モバイル端末が普及している現代に即したツールを導入することで、生徒の学習のハードルを下げることができたと評価。一方で、スマートフォンでは書籍の文字や動画が小さく見づらいという問題も浮き彫りになったという。

 そこで同校ではスマートフォンに加えて、4月からタブレット端末の導入も開始した。生徒は7型のAndroidタブレット「AQUOS PAD SHT21」(KDDIの3G/LTEモデル)か、アップルの7.9型タブレット「iPad mini」(Wi-Fiモデル)のいずれかを選択する。端末代金は教材費に含まれる。なお、AQUOS PADについてはルネサンス高校が法人契約で購入するため通信料はかからないという。また、クアルコムが寄付するAQUOS PADについては同社が通信料も負担する。

 ルネサンス高校では、タブレットの導入にあわせて、英語学習の強化を目的として設計されたナショナルジオグラフィック協会のデジタル教材を利用できるようにした。また大画面になることで、電子書籍の分からない単語をすばやく調べたり、重要な単語やフレーズをメモするといったことも容易になるとしている。

  • ルネサンス高校の学習アプリ

  • 画像や動画を活用したデジタル教科書

  • ナショナルジオグラフィック協会のデジタル教材も利用可能に

 タブレットの導入から1カ月が経過したが、同校が実施した生徒へのアンケートによると、52.7%が常にスマートフォンやタブレットを使って学習しているほか、53.1%がPCよりもモバイル端末を利用した方が学力向上につながったと回答したという。

スマホ学習で習熟度が3割増

  • 「Wireless Reach イニシアチブ」統括責任者のクリスティン・アトキンス氏

 クアルコムの企業市民活動「Wireless Reach イニシアチブ」では、2007年から学習におけるスマートデバイスの活用を支援してきた。同社が2007年に実施したパイロットテストでは、自宅にネット環境がない生徒や数学が苦手な生徒を対象に、学習にスマートフォンを導入したところ、生徒の習熟度が平均して約3割増加した。またネット上に限らず、オフラインでも生徒同士で教えあう状況が生まれるなど高い成果が得られたという。

 同日の会見で登壇した米クアルコム Wireless Reach イニシアチブ統括責任者のクリスティン・アトキンス氏は「21世紀の学習は屋内だけのものではない」と語り、スマートフォンのAR(拡張現実)機能を使った屋外での授業の様子などを紹介。すでにルネサンス高校が導入しているデジタル教科書なども含め、モバイル端末ならではの学習方法をより多くの教育現場に普及させていきたいと意気込んだ。

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