実現に必要なのは情熱--国内クラウドファンディング4代表が対談

 4月30日、サイバーエージェント・ベンチャーズにて「エンタテインメントの未来を考える会 黒川塾(八)」と題したトークセッションが行われた。コラムニストの黒川文雄氏が主宰、エンターテインメントの原点を見つめなおし、ポジティブに未来を考える会となっている。

  • 黒川文雄氏

 今回は「クラウドファンディングってなんだ…!?」と題し、資金調達の新たな可能性として注目されるクラウドファンディングについて、国内4プラットフォームの代表者が集まり、黒川氏とともに対談を行った。登場したのは「MotionGallery」を運営する大高健志氏、「CAMPFIRE」を運営するハイパーインターネッツ代表取締役の石田光平氏、「READYFOR?」を運営するオーマの米良はるか氏、5月中のサービスに向けて準備中の「Anipipo」を運営するグーパ代表取締役社長の平皓瑛氏。

 インターネットを通じ不特定多数の人々へ比較的少額の資金提供を呼びかけ、資金調達を行うクラウドファンディング。米国ではKickstarterが、Android搭載のゲーム機「OUYA」について約860万ドルを調達したことでも話題となり、日本でも注目度が高まっている。クラウドファンディングは大きく分けると、見返りを求めない「寄付」、金銭的な見返りを求める「投資」、クリエイターが提示する権利や物品を入手するために事前に対価を支払う「購入」という3つのモデルに分けられる。今回集まった4プラットホームは全て購入型によって運営を行っている。

4プラットフォーマーが語る立ち上げの経緯

  • 大高健志氏

 映画に強いとしているMotionGalleryの大高氏は「映像製作の作り手になるために大学院に行ったのですが、著名監督やクリエイターでもお金が無いから作れない現状が多いという声をすごく聞いたんです。そこで我々の世代で、新しいクリエイティブの基盤を作る必要性を感じたんです。Kickstarterなどのクラウドファンディングの事例を参考にしながらサイトを立ち上げて、クリエイティブを生み出していけるようなブースターの役割なれたら」と立ち上げのきっかけを語った。

  • 石田氏が説明した資金調達のマトリックス。金額が縦軸で、法人か個人かを横軸としている。クラウドファンディングは、より個人に寄せて小額から高額まで扱う領域があるとしている

 石田氏は「いろんな物事、特にクリエイティブにおいて定価というものはないんじゃないかと考えていたんです。海外でクラウドファンディングが出てきて、日本にはないサービスと思ったのが立ち上げるきっかけ」と語り、CAMPFIREの特徴は日本のカルチャー、クリエイティブなところにフォーカスしているのが強みとしている。

 これまでに鼻型コンセントタップや、スマートフォンで着信があると匂いが出るガジェットなどのユニークなものを例に挙げ「ウケ狙いという側面もあるが、こういう面白いアイデアを一般の人からお金を集めて実現することや、映像のパッケージングとして形にすることが、クラウドファンディングならではだと思う」(石田氏)とし、従来の資金調達方法と比較しても、より個人を対象とし小額から高額までも領域としたのがクラウドファンディングと説明した。

  • 石田光平氏

 米良氏が立ち上げたREADYFOR?は、2011年3月から開始し日本では初めてとなったクラウドファンディングサービス。福井のガイドブックでも店ではなく人にフォーカスをあてた「福井人」や、陸前高田の図書館に本を寄贈するプロジェクトなどの例を挙げ、全体的にソーシャル・イシュー、つまり一般社会において関心の高いことや将来的に関心の高まること、社会貢献をテーマとしたものが多いという。

 READYFOR?を立ち上げたきっかけは、パラリンピックのスキーチームを率いる荒井英樹監督との出会いにあったと米良氏は振り返る。メダリストの輩出など実績があるにもかかわらず資金面で継続が困難な状態になっている話を聞き、「1円でも少しずつお金を出して集まれば、挑戦を続けたい人が成功できる環境になるのでは、そしてそれをインターネットで支えることができるのではと思ったんですね」と米良氏は語り、2009年に支援のサイトを立ち上げた。もっとも当時は寄付のサイトということでうまくいかず、どのようにしたら、ある活動に対して多くの人が面白いと感じ賛同してお金を出してもらえるかを考え、現在のREADYFOR?の仕組みになったという。

  • アニメーションのクラウドファンディングについては、日本のProduction I.Gによる「キックハート」が20万ドルの調達に成功した事例がある

 平氏によるAnipipoは主にアニメーションを中心としたクラウドファンディングを扱うことを目的とし、5月中にサービス開始を予定している。なお資金調達だけではなく、ゲームなどのアニメシーンやアニメから派生したグッズなどのマーチャンダイズ、プロモーションなどのプロジェクトも扱うとしている。

 平氏はクールジャパンなどといった形で、アニメが注目され既存のコンテンツは盛り上がりつつも、現場は冷めている現状があると指摘。アニメーターの平均年収が100万円、離職率も80%以上といった点や、平氏も実際にクリエイターを目指していたが、在学していた大学の教授から最初の月収が6万円と言われ、実際に就職活動をすると本当にそうだったので躊躇したことを例に挙げ「お金が上のほうでまわっていても、現場のほうに降りてこない。そして、こういった現状がまずいと誰もが思っていながら、なにもされなかったんです」と語り、クラウドファンディングによって現状の打破を図り、新しい可能性を開くとともに、アニメ業界を目指す人が希望を持って入ってこれる環境を作りたいと意気込む。

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