黒川氏はCAMPFIREにてクラウドファンディングに取り組んでいる自身のゲーム開発プロジェクト「モンケン」をはじめる際、ゲームメーカーに企画を持ち込んでも売り上げやマネタイズの話が先行されてしまったことを例に挙げ、従来の資金調達方法では面白さや情熱という部分が理解されにくく、利益率やコストが重視されてしまい、新しいアイデアやクリエイティブなことが発揮しにくい状態にあると指摘。それがクラウドファンディングであれば、ユーザーに直接訴えかけることができ、クリエイターも本領が発揮できる可能性を秘めているとして前向きに捉えている。
もっともKickstarterは金額が大きいため目立つものの、成功事例は約3割程度。今回登壇しサービスを行っている3プラットフォームの実現率はおおよそ5割から7割あたりといったところだ。もちろん単純に場の提供だけではなく、プロジェクトの信用性なども含めて、見極める作業や精査は各サービスとも行っているとしている。プロジェクトを掲載するまでの敷居も決して低いものではない。
ではプロジェクトの実現に必要なものとは何か。平氏はキーマンたる人物、発信力のある人物が提案あるいは支援に入ると、そこからの波及効果や信頼性も増し期待できる結果が見込めるという。石田氏はその意見に同意しつつも、何より大事なこととして“情熱”を挙げた。「絶対成功させる、世の中に実現させるという情熱こそが話題を生みますし、人に伝わりやすいと思う」(石田氏)と述べ、米良氏も発信力があることに越したことはないとしつつも、提案者がそのプロジェクトを推進したいのか、そしてその人物としてふさわしいかが大事だと説明。「発信力が強いから、なにをやってもお金が集まるということではないです。このプロジェクトに対して、どれだけ自分がやりたいのかという気持ちをしっかりと伝えることが、成功する上で重要なことです」(米良氏)。
また大高氏は情熱が大事ということに同調しつつ、周囲の人たちを巻き込んでいく力も大事と説いた。Kickstarterなどでは、プロジェクトの提案者同士が支援しあう助け合いが生まれているのも面白い事例として挙げた。
黒川氏はサンフランシスコで行われたGame Developers Conference(GDC)におけるクラウドファンディングのセッションのなかで、プロジェクトを成功に導く要因として、何を目指すかという正しいゴールを設定することや、ファンを大事にすること、広報活動を丁寧にやり続けること、コンテンツの位置づけの明確化、そして出資者のリクエストを聞くことなどが挙げられたことを説明。
特に黒川氏はあるKickstarterのプロジェクトを実行した人から聞いた話として、出資者のリクエストを毎日対応することに追われて、オンラインゲームの運営をしているようなほど大変だったというエピソードを披露した。最終的にそのプロジェクトが成功したのは、こうした提案者と出資者とのコミュニケーションがポイントではと黒川氏は思っているという。また米良氏も、プロジェクトの広報窓口の方がコメントにすぐ反応するような形で、誠意ある対応をすると信頼感が生まれると同調した。
石田氏は、単に応援や支援というポジティブな出資だけではなく「特にクリエイティブなことに関しては、金を出しているから口も出させろぐらいのコミュニケーションがあってもいい」と指摘。日本ではネガティブな意見はしにくいが、それぐらいの熱量を持って意見を出すことによって、クリエイティブなものをより良いものにして、双方によって良い結果が生まれるという考えを示した。
平氏も海外の事例で辛辣な意見が並んだプロジェクトを例に挙げ、「日本的な、言わないけど感じてねという感覚は通用しないし、みんなハッピーなのかと思って蓋を開けたらのもすごく不満が溜まって次に繋がらないということになると、お互いにとって不幸な結果になる」とし、活発なコミュニケーションの重要性を説いた。またその熱量をさらにお互いに高められるように、オフ会のようなリアルでの対話の場を作っていくことを考えているという。
大高氏はこれまでの意見をまとめるような形で「情熱はコミュニケーションの量」と説明。オンラインもリアルの両面でコミュニケーションの量を増やすことは、提案者の顔が見えることにも繋がって信頼性が増し、出資への障壁を下げることに繋がり、さらにプラスの循環が起きていくという。
最後に今後の抱負や展望として、大高氏は、企業や流通の体力が弱まっていて新しい挑戦がしづらい状態にあるするなか、クラウドファンディングは、よりクリエイティブなものにチャレンジできる仕組みとして成り立っていけるとした。
石田氏は新しいクリエイティブやアイデアが生まれてくる土壌になり、そしてそこから新しいカルチャーが形成されることを目指しているとし、絶対に面白い世の中にしたいと意気込みを見せた。
米良氏は、これからの時代は個人でいろんなチャレンジができる社会になるという。それは裏を返すと「生きるのがしんどい、言い訳のできない社会となりますけど、難しい社会だからこそ新しいものが生み出される」(米良氏)と指摘。クラウドファンディングは、チャレンジする人を後押しするプラットフォームになりえると展望を語った。
平氏は、クラウドファンディングはBtoBとは違い、単に儲かるからという理由で資金調達ができるわけではないと認識する必要があると説明。プラットフォーム側も提案する側も、業界の健全化に繋がることを見極めてプロジェクトを提示すること、そしてコミュニケーションをしっかりととって進行することが、コミュニティの活性化、しいてはクラウドファンディング業界全体の健全化に繋がるとした。
黒川氏は、クラウドファンディングのサービスによるバックアップやサポートはあるものの、このサービスをどう使うか、どう利用して新しいものを作るかが大事で、最終的に中身となるプロジェクトを動かすのは提案者であり、推進していくのはその人でないとできないこと。提案者の熱意とサービスが合わさって新しいものが生まれていくことが、これからのエンターテイメントかつクラウドファンディングのあり方だとまとめた。
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